黒船の世紀: ミカドの国の未来戦記
黒船の世紀: ミカドの国の未来戦記 / 感想・レビュー
kawa
黒船来航により近代は始まった。日清・日露の勝利の後、巨大な米太平洋艦隊が来日し白船来航と称された。本書は、そんな時期から仮想敵国となった米国との未来戦を描く小説を材とする歴史分析書。取上げられる主な作家は、海軍大佐・水野広徳、米・ホーマー・リー、英・ヘクター・C・バイウオーター。水野は第1次大戦の現場を目撃し非戦論に転向。リーは、日本の米西海岸占領と勝利を予想。バイウオーターは真珠湾奇襲から始まる太平洋戦の実相を予言。多くの未来小説が軍や庶民を煽る。近代史のユニークなサイド・ストーリーとして興味深く読了。
2023/10/10
Miyoshi Hirotaka
日露戦争後、未来戦記ブームが起きた。黒船という外圧がもたらした心理的な傷が物語の底流。「次の一戦」という作品は、米国の物量に押しつぶされ、敗北する物語。一方、米国でも同時期に似た現象が起きた。「無知の勇気」という作品では、日系移民が脅威。これらは日米双方でベストセラーになっただけでなく、翻訳され、次々と類似の未来戦記作品を生み出し、日米双方の政治家、軍人、知識層に影響を与えた。外圧とは単に軍事圧力という狭いものではなく、わが国にとっては西洋文明の化身で米国にとっては黄禍。お互いに幻影を膨らませていった。
2017/10/07
c3po2006
★★★★
2015/09/22
アンゴ
世間の空気が醸し出されて行く課程を、様々な近未来戦記の背景と相関を解きほぐすことで一つずつのつながった糸にして見せている。日本人とはどのように選択をする国民か、あるいは自ら選択しないことで意に図らず麻痺することを選ぶのか、93年の著作だが年数の流れに褪せることなく日本人に警鐘を与え続けている。問題の先送りで益々選択困難な空気が充満してしまっている今、無責任な扇動に流されることなく、我々に時代の責任者として難題だからこそ冷静な未来への選択が求められている自覚を促す。
2012/01/29
kogyo_diamond
genronカフェ『夢としての大東亜戦争』--架空戦記を軸に語る開戦後80年において導入で本書が紹介された。東浩紀曰く"日米開戦前に500もの未来戦記が書かれ国民は沸き、実際の作戦も影響下で練られ、開戦後の報道もまたフィクションであった。" その一連の流れが纏められた良書であるという。早速手にするも再現ドラマ導入形式の文体に馴染めなかった。とはいえ、米の"排日移民感情"の作用を改めて抑える機会に恵まれ、また今後は国民の責任・テクノロジー信望の視点から戦争を捉え直すいいきっかけになった。
2022/01/17
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