異族 (小学館文庫 R な- 2-2 中上健次選集 2)
異族 (小学館文庫 R な- 2-2 中上健次選集 2) / 感想・レビュー
名無し
物語、小説からの類型を脱しようともがきながら、もしも完結していたらとの妄想を含みつつ、それでも日本語につきまとう宿痾としての天皇制は。
2023/08/07
ますりん
900ページオーバーという厚さに辟易して今まで手が出せないでいた。アザのある3人の義兄弟(タツヤ・シム・ウタリ)とタツヤの幼馴染夏羽は、それぞれ”路地”や”差別”を刷り込まれて育ってきた。共感と確執、強大な権力と他者の思惑、アザのあるほかの者たちとの出会いなど、東京から沖縄、フィリピンへの舞台を転々とする物語。 壮大な物語で未完。”路地”を超えていこうとする著者の一大叙事詩。「軽蔑」のときにも書いたけど、もし夭折していなかったら、これらの作品を超えていった先の物語は、と想像してつくづく残念に思う。
2017/09/25
ディヴァイン
路地が『地の果て 至上の時』において消滅したのを書いてみせたが、この『異族』においてはその路地を作り上げようと試みようとしている。内容も天皇制などを取り上げており、900ページからなることにも苦にならない。未完であることが惜しいし、最後のシノプスも載せているが中上が精緻な言葉に仕立てあげて読んでみたかったと思う。最初に書かれるタツヤの鍛練の姿勢はとても『枯木灘』の労働の真摯な姿勢に通じるものがあり、内容もさることながら人間の人間らしく生きる本能の様にも酔える一冊だった。
2009/04/12
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