共震 (小学館文庫 あ 16-5)
共震 (小学館文庫 あ 16-5) / 感想・レビュー
散文の詞
震災後の東北を舞台にした話なのでこれを書くことは色々な意味で大変だったと思う。それだけでも、頭が下がる思いだ。 プロローグからエピローグにつなげる表現はうまい。決していい話ばかりではない事を改めて思い出させそれを忘れないように、そして知り続けること。それが、共に震え続けることだというのでしょう。いいタイトルですね。 トリックも含め目新しくはないけど、比較的論理的で、途中に挟まれる震災の様子も、臨場感を盛り上げていて、ぐっと現実味が増す。 ミステリーというよりもドキュメントって感じかな。
2020/07/20
rico
震災から2年、仮設住宅で起こった殺人事件の背後には被災地を食い物にする存在が・・という相場さんらしい社会派ミテリーで一気読み、のはずなのに。挟み込まれるあの日の光景に立ちすくむ。あの道を通ってたどりついたあの場所。「これは瓦礫ではありません。誰かの大切なものです。」現地スタッフの言葉。砂の中に埋まっていたおもちゃ。2回だけ、数日間のボランティアでの記憶が甦る。「伝えたかったのは被災地の現在。」この言葉で腑に落ちた。時とともに薄れゆく記憶や痕跡。11年経った今、この作品に出会った意味を噛みしめる。
2022/03/18
アッシュ姉
震災は過去の出来事ではなく現在進行形であることに改めて気づかされます。卓上の理論ではなく、作中の早坂氏のように被災地を駆けずり回って現場で直接耳を傾け、被災者が本当に必要としているものを届けようと尽力されている方には本当に頭が下がります。それとは真逆に震災を利用した卑劣な詐欺を働く輩には心底怒りを覚えます。社会問題をテーマに小説としても読み応えのある作品としては『震える牛』には及ばずといった印象を持ちましたが、震災の復興はまだ終わっていないということを再認識するためにも手に取って良かった一冊でした。
2017/04/16
ケイ
犯人は、序盤でこの人だろうとわかる人が多いと思う。でも、だからと言って読む楽しみが減るわけではない。筆者のジャーナリズム精神から(?)伝わってくる震災後の世相に読み甲斐がある。NPO法人の禍々しさ、義援金の搾取などは、東北だけの事でなくなった。コロナ禍を経て全国民が共有できる憂いと憤怒。 正直者が悲惨になる世の中でないようにと願う。
2023/06/09
ちょこまーぶる
読んで良かったと心から思える一冊でした。この本はフィクションなのか?って思ってしまう内容で、今もそしてこれからも忘れてはいけない描写や心の在り方などが書き綴られていて、震災関連のルポルタージュとしての一冊と考えても良いと思いました。しかも、震災とミステリーを掛け合わせるという内容にも心が揺れました。もしかして、共震というタイトルは震災とミステリーの共に揺れ動くという造語?何ですかね。でも、実際に復興利権というドロドロとしたお金の流れはあったんだと思います。国民からしたらある意味二次災害かもしれませんね。
2021/12/12
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