世界でいちばん美しい (小学館文庫 ふ 10-10)
世界でいちばん美しい (小学館文庫 ふ 10-10) / 感想・レビュー
三代目けんこと
せった君への、最後(499頁)の2行のための物語。
2019/11/20
じぇりい
「船に乗れ!」以来の藤谷さん。やはり哲学的だった。藤谷さんは世界でいちばん美しい何を書きたかったのだろうか?限りない愛しさを感じさせるせった君と嫌悪感しか感じられない津々見を対比することで、ピュアなせった君の美しさが一段と際立つ。哲がせった君について書き留めたものを順を追って読ませる形で進むが子供の頃、自分のピアノを弾く姿を「見したかった」という幼い表現が段々と大人なそれになっていく過程も読んでいて面白かったし、せった君の誕生日に纏わる秘密が最後にああいう形で繋がった時は胸が苦しくなった。
2017/01/08
マカ
みんなに愛されたせった君の人生があんな最期でいいはずがない。音楽に人生を注いできて作ってきた楽曲が何も残らなかったなんて・・・切ないし悔しいしやり切れない。あいつさえ現れなければ、こんなことにはならなかったのに。あいつ出す意味あった?個人的にはあいつは出さずに清らかなせった君の話で良かったのにな。
2022/08/15
kame
残酷な程までに真っ直ぐで美しい心を持ったせった君と、そのそばで自分に何が出来るのかについてもがき続けながらもせった君に魅了されていく島崎。その姿に心温まったり、胸が苦しくなったりを繰り返す前半。津々見とせった君の物語が徐々に融合していく恐ろしさを感じる後半。そして起こってしまう悲劇と最後に残る寂寥感。小説全体に優しくも物悲しい雰囲気があり、所々に著者自身の人生観も見える。これ程までに引き込まれ、そして物悲しさを感じる小説には出会ったことがない。『美しい人間とは、人を美しくする人間のことだ。』
2017/05/30
ガブリエル
なにこれ~!せった君の友人、作家の島崎って「船に乗れ!」のサトルじゃん。おまけにピアノの北島先生まで出てくるし~。もう、「船に乗れ!」の前日譚、後日譚といったところ。相変わらずサトルは肥大した自意識に悩まされているけどせった君という友達がいたから、音楽の道を外れてもまっとうに生きて来たんだなあ。「世界で一番美しい」という題が何を指しているかは、作品を読むと、切なさや哀しみとともに胸にストンと落ちてくる。ーー美しい人間とは、人を美しくする人間のことだ・・・この作品を読んで、私も少しは美しい心になれたかな~
2016/12/04
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