日本一の女 (小学館文庫 さ 16-2)
日本一の女 (小学館文庫 さ 16-2) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
良家に生まれ、妹は縁談が来すぎるほどの超美人、なのに主人公はまさかの醜女。なんと祖父が提出した出生届の名は『サル』そんな主人公サダは持ち前の才覚を商いで発揮しみるみる繁盛してゆく。曲がった事が嫌いで考えをそのまま口に出すから評判は最悪。男ばかりの子宝に恵まれやがて戦争が。必死で働き子供達にひもじさも寒い思いもさせなかったサダは、それでも町の鼻つまみ者。死後さえ「あげなクソ婆弔ってやらんでもいい!」と。お坊さんが語る亡きサダとの終章は感涙。昭和の女の強さ、魅かれるなぁ!でもあまり読まれてないんだね‼️🙇
2018/12/20
ジンベエ親分
昭和になるとほぼ同時に町の商家から村の農家に嫁ぎ、昭和を生き抜いた女の一代記。その曾孫が本人を知る住職から聞く回顧録という体裁。醜女のため美人の妹と比べて実家に冷遇されたコンプレックスから、農村で精米所の事業を興し、男の子を8人も産み育てて餓えさせず、だが戦争に翻弄され家族からも嫌われても自分を曲げなかった偏屈な女だが、自分を曲げなかったことで失ったものも大きかった。そのサダの生涯が、言葉少な目に淡々と語られる。特にオチもない話なのだけど、妙に充足した読後感。そして大分弁の会話文が良い味なのだ。
2020/01/19
dr2006
昭和初期、裕福な家に生まれながら、農家に嫁ぎ沢山の子を育てたサダの一生を描く物語。同調圧力に塗れたムラ社会の中で己の信念を貫いたサダに感服した。当時の生活環境や倫理観は目を背けたくなることも多いが、ある意味寛容な社会だったとも言える。サダの「一人だけ違うことをしている私を悪者にするのは簡単だ。感謝されずいい人だと褒められることはなくても、何の為に生きているのかは自分でわかっていた。」という言葉が深い。SNSでのイイネと攻撃にみる現代の非接触型社会への示唆だとも思う。日本の近代文化人類学に明るい隠れた秀作。
2021/03/27
ひなきち
タイトルにひかれて手にとった本。読んで良かった…しばらく余韻が残りそう。コンプレックスを跳ね返そうと奮闘する不器用なサダに思わず涙…。強くあろうと日本一の女であろうとすればするほど、周りがサダを憎んでいくのが悲しかった。和尚さんと曾孫のやりとりがいいアクセントで、かつてきっと実際にいたであろうサダという日本女性の生き様を、浮き彫りにしてくれる。また、丁寧に書かれすぎない文章だったからこそ、自分のサダ像を頭に浮かべることができた。
2018/07/16
Yu。
良家に生まれるも美男の兄と美人の妹の間に挟まれ、愛情の差別を目の当たりにし、また世間の風当たりもモロに受け、すっかり捻くれてしまった醜女のサダ‥ 物語はそんな彼女が嫁いだ先で会社を興し成功し、子宝にも沢山恵まれるも、人として失くしてはいけないものをどこかに置き忘れてきてしまったが故に、生涯ずっと孤独のランナーとして走り続けなければならなかった彼女の姿に焦点を当てた人生劇場。。超頑固者で冷徹無比な彼女だけど、だからといって簡単に揶揄出来ない部分もある‥そこを汲み取ってあげる事も大切なのだ。
2018/07/30
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