政治的に正しい警察小説 (小学館文庫 は 17-1)
政治的に正しい警察小説 (小学館文庫 は 17-1) / 感想・レビュー
しんたろー
予備知識なしにタイトルに釣られて読んでみてビックリ!…「重い社会派」的なイメージがある葉真中さん作品とは大きく違う感じで「ブッラクユーモアミステリ」とでも言えばいいのか、往年の筒井康隆さんの短編集みたいだった。6つの話は大なり小なり毒や皮肉があって読み手を選びそうだが、手を替え品を替え、読者を楽しませようとする意図は伝わってくる。好きなのは切ないストーリーながらも微かな温かみで終わる『秘密の海』天才棋士の話を興味深く読ませてくれた『神を殺した男』の2編。表題作は自虐ネタに爆笑しつつ、作家の悲哀も感じた。
2019/05/22
Yunemo
多彩なテーマの6短編ですが、表題作については、混沌とし過ぎて、ブラックという表現には行きつかず、とても国家問題級の刺激作とは感じられずに。それぞれのテーマで、長編でじっくり書き上げていただけたら嬉しい。そんな想いに捉われながら読了。6編の中のどれかのテーマでケアマネージャーの苦しみを記した作品同様の、身に沁みる刺激を受けてみたい感覚に。神を殺した男、の作風が著者の王道かな、なんてことも。尊厳死に係る表現の難しさがあって、終わってみれば、何のことはない、こんなもん、寂しい感じで。でもテーマ別に今後の期待感。
2017/12/30
ナルピーチ
多種多様な構成で描かれた短編6作品は一言で言うと“クセが強い”物語ばかり。■そのほのぼとした題名とは裏腹にブラックユーモアに長けたオチをみせてくれる「カレーの女神様」■まるで禅問答の様に、そのタイミングによって人の心は様変わりする。生死とはなんぞや。そんな状況を表現した「リビング・ウィル」■表題作の「政治的に正しい警察小説」これはただの洗脳だろ!と思わずツッコミたくなる。葉真中先生の新たな一面を存分に堪能できる一冊だ。
2022/06/01
utinopoti27
本書は一言でいえば6篇のブラックミステリ集。ただし、それぞれ作風は異なっていて、シリアスな社会派風から、アクの強い風刺が効いた作品まで、掲載順にもこだわりがありそうです。表題作は、特に警察が出てくるわけではなく、言葉狩りに抗議して断筆宣言した筒井康隆さんへのオマージュではないかと。とりわけ、細心の注意を払って盛りつけた料理を、いきなりフードプロセッサにかけて、グチャグチャにして飲むかのような「カレーの女神様」が自分的にはツボ過ぎます。オチも含めて好き嫌いが分かれそうな意欲作といえるでしょう。
2018/02/06
🐾Yoko Omoto🐾
バラエティに富みながらも、シニカルな路線で統一された短編六編。マイベストは、幼い頃母親が失踪前に作ってくれた"秘密の隠し味入り"のカレー。記憶に残るその味わいに隠された、とんでもない真相が度肝を抜く「カレーの女神様」。尊厳死をテーマに、人間の優れた環境適応能力を実に皮肉に描いた「リビング・ウィル」。執拗な洗脳で植え付けられた記憶、そんな事実は無かったと思い込みたい強固な意思が塗り替えた記憶、曖昧で繊細なそれら人間の記憶というものが、真実を歪めていく恐怖を描いた「推定冤罪」。どれもなかなか面白かった。
2017/12/09
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