終身刑の女 (小学館文庫 ク 8-1)
終身刑の女 (小学館文庫 ク 8-1) / 感想・レビュー
ヘラジカ
この世は弛緩した地獄なのではないかと思わせる筆致。主人公であるロミーの来歴は勿論だが、それを取り巻く人物たちの人生は同じくらい閉塞的で強烈だ。物語の枠組み自体に取り立てて変わったところはないのに、それぞれが背負う罪過の重みと密度が、この作品を凄まじく迫力のあるものにしている。ここで描かれる人々の「特別感のなさ」がまた恐ろしい。たまたまピックアップしただけで、この世界にあってはありふれた生涯なのではないかと錯覚する。重厚感ある群像劇。いきなり文庫で出版されるような小説ではないだろう。第四部は特に辛かった。
2021/02/06
かんやん
なぜヒロインは人を殺め終身刑となったのか。彼女の過去(カリフォルニアの殺伐とした底辺の生活)と現在(女子刑務所のシステムと仲間の囚人たちの人間模様)を描いて、大変読み応えがあり、安易にミステリを持ってきて読者を引っ張ったり、サスペンスでハラハラさせないところも大変好ましい。又、刑務所の文学の講師(下層階級出身)の外からの視点を導入することで、作品が重層的になって、格差社会と犯罪の関係についてじっくりと考えさせられる。ただ犯罪の動機や裁判の経緯など色々と解せない点が出てくるし、結末は自分的には残念だった。
2021/11/23
コージー
★☆☆☆☆タイトルとあらすじに惹かれて手に取ってみたが、期待はずれだった。ストーリーの本筋はどのにあったのだろう。おそらく山場は後半なのだろうが、時間がもったいないから300ページほどでリタイア。獄中の話やドラッグの話など、日記のように脈絡のない話が、まさに『綴られている』だけなので、途中で飽きしてしまった。この文体は私には合わなかった。
2021/11/13
原玉幸子
男女二人の主人公の人生が交錯するかと思いきや結局劇的な展開は無く、彼女は不幸や不条理を背負い込み只々不遇でした。エンターテインメントとして「期待を裏切る」結末は分からなくもないですが、向き合う感情としては、「期待通り」にハッピーエンドであって欲しかったです。私は、米国人は文芸を通じてその世代の人間の精神性を浮かび上がらせる描写に長けていると思っていて、本作品が持て囃されることから言えば、既に米国を覆う人々の感情が、或る種のじとーっとした不幸との膜に包まれてしまっているのかも知れません。(◎2021年・秋)
2021/09/03
ハレ
文学的には優れているのだろうけど貧困層の犯罪行為や刑務所内の描写が哀しくて暗いし、みんな愚かだし何度も読むのを止めようかと思った。 女子刑務所内でトランスジェンダーの扱いが「男っぽい女」より入所を認められた「女っぽい男」に嫌悪を抱いて暴力沙汰になり暴動まで起きるのには驚く。その間隙に脱獄を謀った主人公だが達成はしないから読んでる方も挫折感と哀しみしか残らない。せめてラストが脱獄成功の映画「ショーシャンクの空に」のように明るく希望が持てるなら読後もスッキリと本を閉じられたのだろうけど。
2024/04/23
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