テムズ川の娘 (小学館文庫 セ 2-1)
テムズ川の娘 (小学館文庫 セ 2-1) / 感想・レビュー
白玉あずき
このゆったりしたテンポ感が少々辛かった。緩やかに流れるテムズ川の淀みか。が、読後振り返れば流量の豊富さが物語の厚みと重なった。謎の少女はワイエットリーの娘であって欲しいし、再度転生して蘇っても欲しい。リアリティなどどうでもよくなるのよ。善良なる者も悪党も、等しく流れゆくテムズのよどみに浮かぶうたかたの かつ消えかつ結びて・・・・云々。生と死の流転、そして程よい勧善懲悪モノ。地味に満足しました。
2022/04/16
星落秋風五丈原
チャールズ・ダーウィンの『種の起源』が発表されロンドン万博など近代化に向かっていく一方で、未だ犯人が見つかっていない切り裂きジャック事件が起こっていたイギリス19世紀、ヴィクトリア朝。ヴィクトリア女王のもとこの上なく国家は繁栄していくのに、全ての国民に富の分配がなされてない不公平を包含していたいびつな時代でもある。現代ならSNSで瞬く間に広がる“死んだと思っていた少女が生き返った”知らせが人々の口伝えに広まってゆく様子が、まさに物語が作られていく過程を見るようで面白い
2021/10/09
かんやん
ヴィクトリア朝英国、テムズ川上流の川岸にある酒場に、物語を求めて人々が集う。そこに運び込まれた女の子の遺体が息を吹き返すと、彼女の親や姉であると名乗る者たちが現れる。彼女はどこから来たのだろうか………。文庫で700pの大作であるが、全くアピールするところがなかったのは、著者が物語を語りながら、至る所に流通し、貪欲に消費される物語というものに鈍感だからではないのか。厚いページは豊かな逸脱ではなく、大したことない謎の先送りとはぐらかせに終始する。読み進むにつれて、文はニュートラルにキャラは役割になってしまう。
2021/11/29
ほちょこ
年末年始にかけて読んだ一冊。長い長い長い。そしてこの子、どこの子?が果てしなく続くのである。はて?どこの子?という疑問符の周辺に取り巻く人間模様がまた大きな渦に広がって、まるでもんのすごい大きな壁画を目の前に突き出された感じなのである。どうよ?この壮大なスケールの年末年始。面白かったかって?この超大作を前にして、面白いだのつまんないだの、ちっぽけなモンダイなのである。(つまり面白くなかったって言ってるのか?)さぁ、サクッと次いこう!
2022/01/07
Kazuko Ohta
持ち歩くのが大変な700頁で、開く手も痛いぐらい。読了に丸1週間かかりましたが、余韻も大きい。心臓が止まっていたはずなのに生き返った少女。彼女のことを行方不明だった家族だと言い募る3組。ある者は自分の娘、ある者は自分の孫、ある者は自分の妹だと。彼女が運び込まれた酒場では物語を紡ぐ人が重宝がられ、その様子がとても面白い。上手い話は時に美味い物よりも良い酒の肴になるものなのですね。各人の話に心を奪われて最後まで。特に王子と奴隷の間に生まれたと噂される彼の話は、それだけでじゅうぶんひとつの話として語れそうです。
2021/11/28
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