暁の密使 (小学館文庫 き 5-1)
暁の密使 (小学館文庫 き 5-1) / 感想・レビュー
KAZOO
北森さんの作品としてはかなり「硬派」に属する作品であると思っています。再読ですが、沢木耕太郎さんの「天路の旅人」に触発されました。こちらの主人公はお坊さんで、日清戦争と日露戦争の間に西蔵に潜入してロシアに対抗していこうという司馬遼太郎の作品に出てくる明石元二郎(こちらは軍人ですが)を思い出せてくれます。このような作品をもう少し書いてほしい気がしました。
2024/02/15
mura_ユル活動
北森鴻さん2作目。友人から薦められて、2ヶ月前から。ようやく、読了・・図書館本。歴史上での自分の未知の部分が嵌っていく感覚が読みを進める原動力に。話は日本が明治維新後の欧米列強に圧されつつある時代。仏教の原典を学ぶため、一人の僧侶能海寛が日本からチベットのラッサを目指す。山行での寒さの厳しさが伝わる。ロシアなどの列強の脅威と妨害。能海の本当の目的は?W.ウェストンや八甲田の彷徨や西本願寺と東本願寺の歴史も登場。能海のチベットを目指そうという、心の強さ・純真さが良い。最後は明治時代の三蔵法師の様にもみえた。
2013/08/25
かっぱ
果たして国家の存亡を背負った真の密使とは誰のことなのか。日清戦争の勝利に沸き立つのもつかの間、迫りくる露国の黒い影。不凍港を求めて日本へと侵略の魔の手が伸びる。そんな中、ただ純粋にダライ・ラマへの接見だけを夢見て、遠き西蔵へと向かい歩き続ける能海寛。その傍らには、能海の純粋な心に打たれて命さえ惜しまぬ友たちの姿があった。史実を基に、冒険活劇に仕立て上げた北森さんお得意の明治もの小説。
2015/10/08
じゅむろりん
時は明治。不平等条約で列強各国と肩を並べるため日本はアジアの要衝チベットに密使を送る。その密命を全く自覚していない仏教者能見は、純粋に日本仏教発展のために命懸けでラッサへ向かう。様々な思惑が交錯し命を賭して繰り広げられる修羅場は、史実のよう。テーマは固いのですが、歴史に詳しくなくても十分楽しめます。まさか、楊用の運命がこんなに壮絶になるとは。まさか、ここで終わるとは。北森氏の新たな魅力を発見できました。
2019/08/29
TheWho
時は明治期、人跡未踏の地西藏(チベット)の拉薩(ラサ)を目指し行方を絶った仏教者・能海寛の探検行を夭折の歴史ミステリー作家が描く歴史物語。能海寛は、江戸期の安寧と維新後の廃仏毀釈等により瀕死の仏教復興の為西藏語大蔵経を求めチベットへ潜入を敢行する。しかし過酷な探検行と、日露戦争前夜欧米列強の思惑と暗躍の渦中に巻き込まれる。とにかく主人公能海寛の一途で峻烈な生き様や同伴する面々激烈な立ち回り、そして明治政府の奇想天外な謀略等が興味深く展開する。史実とフクションが交錯する魅力的な一冊です。
2017/07/17
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