新編傑作選 1 青嵐 (小学館文庫 や 15-1 新編傑作選 1)
新編傑作選 1 青嵐 (小学館文庫 や 15-1 新編傑作選 1) / 感想・レビュー
キムチ
周五郎は学生時代に大半読んだ。でもふと、人生に倦むと読みたくなる。でゆっくり、頁をめくる。いいなぁ・・時代は江戸期、戦乱もなく災害や飢饉といった事どもの中で人々は暮らす。登場人物は武家、商人、農民。名もなき人々だからこそ足が地についている。男はかくあれと周囲から言われ、女も然り。その中でほっこりした話が呟きのように周五郎によって文字となる。どれも秀作だが「城中の霜」の痛いほどの静謐、「青嵐」の情感がいい。また、次を漁ろう・・
2014/06/29
ソーダポップ
一般に周五郎の時代小説は「武家もの」と「下町もの」にわけられると思うが、この「青嵐」は「普通の人」である。だから、役目や仕事、恋や家庭や友情、信頼周囲との折り合いがひたすら描かれていた。真面目に日々を歩む自分、極限すれば良くも悪くもそこにあると思う。裏切られても騙されても友を信頼し、あるいは友の更生を信じて引き受ける「武家もの」の主人公たちからは「普通の人」の粘り強さを感じた。「普通の人」たちの潔さ、相手を何処まで信じて待つ愚直なほどの決意さがこの著書を引き立ていたように感じました。
2024/01/21
Kira
図書館本。既読の二篇を除く五篇を読んだ。「ひやめし物語」は武家の冷や飯食いに訪れた幸運が楽しい。表題作の夫婦の絆の強さにもほっこりした。巻末に収録されたエッセイ「父・山本周五郎の思い出」がとてもよかった。山本氏の素顔を初めて知ることができた。
2024/07/01
三平
武家ものを集めた短編集。正直、著者の「武家もの」、特に下町育ちの後妻と再婚した昭和21年より前に書かれた作品は建前的な忠孝小説が多く苦手なのだが、今作は年代が様々な作品が混じっているものの、全体的に読後が爽やかで好感が持てた。特に印象に残ったのは橋本左内の最期を描いた『城中の霜』。美しくはないかもしれないが、人となりを現すこれ以上ない散り様が深く心に残った。巻末の清水徹氏による父としての著者を語るエッセイも良かった。(松本大洋による洒脱なカバーイラストも何ともイイ!)
2016/04/17
aki
「いさましい話」について。 本社から地方の工場ないし支社に配置転換されたエリート社員。あるいは子会社の役員として派遣された大手企業の中堅社員を連想する。現代にも通じる物語だ。また、妻の松尾は自我と言うか気の強いこれまた現代に通じる誇り高い女性。世を渡ることは侍も現代のサラリーマンもいつの時代も大変です。 「侍は1日1日を死ぬ覚悟で生きろ」、これですね。
2019/06/15
感想・レビューをもっと見る