蝦夷地別件 (中) (小学館文庫 ふ 4-5)
蝦夷地別件 (中) (小学館文庫 ふ 4-5) / 感想・レビュー
NAO
再読。約束の鉄砲の到着は絶望的になったがアイヌたちの蜂起が各地で起こる。だが、ちょっとした考え方の違いや利害関係でアイヌたちがバラバラになっていくのが悲しい。そして、謎めいた登場人物たちの影の部分が明らかになっていく。船戸作品を読んでいていつも思うことだが、話はとても壮大なのに、登場人物の背景や心理描写がとにかく緻密で細やかだ。さらに、この『蝦夷地別件』は、自然描写も、厳しくも美しい。
2020/01/29
kawa
ロシアからの鉄砲調達が計画通りにならない中、国後の実質的リ-ダ-・ツキノエの息子・セツハヤフは父を裏切って蜂起する。世に言う「クナシリ・メナシの戦い」に風雲急を告げる東蝦夷だが、アイヌ側の目算は外れて東蝦夷全域の騒乱には至らない雲行き、松前藩も幕府に弱みを見せまいと素早く鎮撫軍を編成。下巻での盛り上がりの展開に期待が高まる。
2021/05/26
キャプテン
★★★☆☆_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1789年江戸時代─国後・目梨の戦い編】国後のアイヌたちがついに蜂起する、激発の中巻。しかしその戦いの、なんと、か細いことか。それは叫び、いや、ともすれば単なる悲鳴にござる。か細くても、か細いからこそ耳を塞ぎたくなる声。遠き江戸は何を思い、蝦夷地はどう変わっていくのか。弱さと強さと、アイヌ、和人、侍、坊主、入り乱れる全てを巻き込んで蝦夷地は熱く、膨張していくのがよく分かったでござる。この巻の中盤で、あの野郎だけは絶対に許さんと、男ならそう思うはずでござる。
2018/02/05
翔亀
物語は中盤。歴史小説は結末が判っているから、敗者の歴史小説は読むのがつらいものだ。"滅びの美学"という手もあるだろうが私は好まない。その点、本書はアイヌの文化や生活について作者が共感をもって描いているだけに、アイヌ国独立とか歴史改変小説にしてしまえばもっと快感なんだろうになと思わせたりもするが、しかし過去の歴史という制約を崩さずに、アイヌ社会の矛盾と苦悩という"現実"と、そしてあり得たかもしれない"可能性"を、あえて示そうとしているところに重みがあり、しかも重苦しさの中にも洒脱があるので読む楽しさがある。
2015/06/07
きょちょ
アイヌが反乱を起こすわけだが、一枚岩には当然なれず仲間割れする。 だからこういった、「人間が生きていく上で、普通でない極端なケース」=「戦争」というときは、しっかりしたリーダーが必要なのだな~。 でも戦争は当然反対でゴンス。 それぞれの時代、それぞれの国、それぞれの考え方・生き方で、いろいろな運命があり、それに私は思いをはせた中巻。 ただ、こういった日本の昔の物語を読むとき、それがいつの時代にせよ食べているものがとっても美味しそうに思えてくるのだが、今回は全くそう思えなかった。 なぜだろう?★★★★
2018/12/20
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