旅の終わり、始まりの旅 (小学館文庫 い 26-2)
旅の終わり、始まりの旅 (小学館文庫 い 26-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
5人の作家による、青森を舞台とした小説の競作。西加奈子は太宰の『津軽』に寄りかかりすぎていて登場人物の2人が個性に乏しい。島本理生は、(おそらくは実在の)カトリック教会を舞台にしている以外は青森を生かしていない。しいて言えば、井上荒野のゲイ小説が篇中ではもっとも成功しているか。嶽本野ばらは、幻想小説となるには作為が目立ち過ぎ。最後の黒一点、夏川草介も、登場人物たちの設定があまりにステレオタイプな上にリアリティも欠いている。民俗学専攻の大学院生が太宰を知らないなんてありえない。残念ながら期待値以下の結果に。
2015/04/04
りゅう☆
一緒に歩んできた二人の友情の深さを感じた西加奈子さん、懺悔により許せる喜び、消える憎しみを味わった島本理生さん、「もしも俺を捨てずにいてくれるなら、シンゴが誰と寝ようがかまわない。本当にかまわないんだ、と俺は海に向かって言う」恋人との最後の旅の切なさがジンジン伝わってきたのにラストが腑に落ちない井上荒野さん、死んだ我が子があの世で伴侶が持てる供養『死霊婚(嶽本野ばら)』で出会った女性と不思議な体験したり、民俗学者と教え子のいつもの旅で亡き妻の思い出に『寄り道(夏川草介)』した二人の関係が心地よかった。→
2015/12/02
ワニニ
【旅週間@月イチ】ああ、やっと最後に岩木山を望む広々とした景色が味わえ、旅っぽかった。本州最北端を舞台に、魅力的な五人の作家の短編集。とはいえ、何で青森縛り?そして、青森に対して私が持っていた、鬱屈とした、ちょっと暗いイメージ、おどろおどろしい雰囲気がそのままで、青森に惹かれ、行きたいという気持ちまでは起こらなかった。しかし、色々な人たちの旅=心模様、人生の一区切りなんか読むうちに、日常から離れて、遠くへ行きたいなぁという気分に。タイトルが良い。
2018/03/28
美登利
実際に作家さんたちが青森を旅して書いたアンソロジーとは知りませんでした。それぞれ作家さんたちの個性が溢れんばかりの一冊。夏川草介さんのお話が一番良かったです。情景が浮かんでくるし、何しろ登場人物が愛おしい感じがします。青森は最近、小説の舞台としてよく読みますが訪ねたことはありません。この一つ一つの短編に出てる人物と少しも重なる私ではありませんが、どなたかになって旅してみるのも悪くないかも、そんな気分にさせてくれるお話でした。
2014/03/13
b☆h
タイトルに惹かれた一冊。イメージとは少し違った、青森への旅する連作短編。久しぶりのアンソロジーは既読作家さんばかりだったけど、こんな話も書くんだなぁと思えるものもあったりして楽しめた。県別でシリーズ化してほしいなぁ。好きだったのは、夏川さん『寄り道』と嶽本野ばらさん『死霊婚』。まだ読めてない遠野物語が何回か出てきて挑戦してみたくなった。
2024/02/17
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