寂しい写楽 (小学館文庫 う 11-1)
寂しい写楽 (小学館文庫 う 11-1) / 感想・レビュー
ふじさん
写楽=齋藤十郎兵衛が確定した今、歴史的ミステリーとして写楽を描くのが難しい時代に、新しいアプローチで写楽に迫った歴史小説色の強い異色作。丹念な時代・風俗考証を通して蔦屋重三郎を中心に、山東京伝、北斎、歌麿、滝沢馬琴、十返舎一九、それに写楽を絡めて描く人生壮絶な人間ドラマだ。どれほど暗い時代であっても、「寂しい」気持ちでいっぱいでも、その状況に絶望せず立ち向う強い意志があれば、必ず道が開ける。写楽に関わることで再生のきっかけを掴んだ男たちの物語は、同じように厳しい時代に生きる読者に勇気を与えてくれる。
2024/05/03
じいじ
宇江佐さんの50作目にして、初めて味わう肌触りの小説だった。著者独自の視点から、絵師・東洲斎写楽を描いている。人情味あふれる江戸の人々を描いた、いつもの宇江佐小説と読み心地が違います。新しい宇江佐真理との出会いでした。今作は、史実を忠実に捉えた作品に仕上がっています(それが影響したのか? 少し堅い文体で退屈なところも…)。しかも、主人公の「写楽」をオブラートで包んで、ミステリアスな筆致になっているのも面白いです。まさに「寂しい写楽」が克明に描かれた、宇江佐さんの労作です。
2021/11/18
ぶんこ
かなり昔に高橋克彦さんにはまっていた頃があり、彼が写楽の研究者とは知っていましたが、写楽が謎の人物と言われていたのは、この本で初めて知りました。 とても意外でした、人物像も思い描いていたような豪放磊落とはほど遠かった。。。 写楽その人よりも、蔦屋や京伝、北斎、十返舎一九などの当時の文化人の生き様や世相が分かって面白かったです。
2015/12/01
ともくん
未だに謎の多い絵師、東洲斎写楽。 写楽とは何者なのかを期待して読むと、少し期待外れかもしれない。 だが、写楽が生きた時代の、絵師や戯作者などのやり取りを読んでいるだけでも面白い。 葛飾北斎、十返舎一九、山東京伝など、錚々たる顔ぶれが集まっている。
2020/09/24
優希
写楽は名前は知ってはいますが、その人となりまでは知りませんでした。写楽その人というより、周囲の人との関わりの中で描かれるので、人間ドラマを描いたと言ってもいいでしょう。
2021/03/01
感想・レビューをもっと見る