冬の蜃気楼 (小学館文庫 や 22-1)
冬の蜃気楼 (小学館文庫 や 22-1) / 感想・レビュー
よし
題に惹かれて、読んでみた。主人公たちの人間関係、出来事は全くの不可解さに混乱させられる。大学でたばかりの助監督、石田。17歳の美少女 瑠美。そして、下手な中年役者 羽柴。とても現実とは思えないような、まるで映画撮影所のシーンの積み重ね。30年後のラスト章もまた、「迷宮」の深みにはまってしまう。・・なんとも、題のまま、「冬の蜃気楼」が全編を覆っている。
2015/09/05
夏子
戦後すぐの映画業界に助監督として入ったばかりの若い男と彼を振り回すベテラン俳優の男と新人女優の物語。特に大きな事件もなく主人公の自意識過剰な部分だけが目に付くけれど33年後の再開の場面での不確かな記憶を元にしての会話がとても生々しくてこういう事はどこでも普通にあるのかもしれないなという気味の悪さが残った。
2018/03/28
cof
この人の描くひとの多面性というか、善悪清濁ないまぜになってる感じがとても好きだ。この話の最終章のおどろきは、表現しづらい。びっくりするというのとは違う、置いていかれたような気分。私の歳でも、人と昔の記憶が食い違うことはある。もっと歳をとったなら尚更だろう。昔の記憶があやふやで、取り返せない不安と安堵。
2014/06/29
コジターレ
読メ登録前に読了。
じんぎすたん
人生はどこまでがリアルで、どこからが虚構なのか。つまらない冗談に無理に笑ったり、いっぱしの大人のように名刺を差し出す私は、私であって私でない。それらの行為は、演技といえないこともないかもしれない。でも、常に心のあるがままに動いていては人生が破綻する。だから人はある程度ドラマの中で生きざるを得ないのだ。何が自分にとっての真実かを定義するのは、人の心次第。私が真実と信じているものも、事実と異なることはだいぶ多いのかもしれない。エンタメ性が高く、会話を楽しみつつ色々考えさせられる一冊でした。
2014/01/08
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