東京ヒゴロ (2) (ビッグコミックススペシャル)
東京ヒゴロ (2) (ビッグコミックススペシャル) / 感想・レビュー
天の川
松本大洋、本当にたまらない。漫画家たちの苦悩や呻吟が押し寄せてくる。そして、彼らを支えようとする編集者の思い入れの深さも。作品を創作することはかくも苦しいものなのか。時流に合わなくなり学習漫画の挿絵で糊口をしのぎながら母の介護を続けているものの、力をふり絞って新作を描く西岡、自分の才能の限界を感じながらポーカーフェイスを保つアシスタント草刈、売れるために矜持をへし折られたものの義理を通そうとする飯田橋、一躍脚光を浴びたものの不安を募らせる青木・・・。読むほどに切ない。漫画への情熱がヒシヒシと伝わる一冊。
2022/11/15
キジネコ
マンガにしか表現できないモノがあるんやなあ…て静かに思います。命を削る様にして描くマンガが作者自身から遠ざかっていく。足掻き藻掻くほどに大切なものと埋めがたい距離の広がりを止められない焦燥。読者は余白の重さに沈黙し、一話一話最終コマに描かれた街角の風景の何処かに自分自身が居る事に思いを致す。分かれた妻と子を見送った男の背中。欲したモノを手にして戸惑う男。大事なものの優先順位が変わってしまった女の諦観。分水嶺を渡る不安に疲れた若者。それは全てが私達の日常。マンガでしか味わえない世界、きっとそう。余韻が。
2023/06/23
ミエル
登場人物の立ち位置も理解できてきてストーリーが動き出した。それぞれが、膝がガクッとなるような挫折や苦しさと向き合い、それぞれの方法やスピードで困難と並走するような描写にグッとくる。不快なベタつきのない優しさと程よい突き離しが心地良い。読み進めながら、意味のない涙がじわっとするのは何故だろう。私が人のやさしさに弱いだけ?笑 大きな事は何も起こらないストーリーなのに久しぶりに心がギュッと刺激された気がする。
2024/06/14
ぐうぐう
『東京ヒゴロ』各エピソードのラストカットは、いつも街の遠景が1ページ1コマで描かれる。建物がひしめき合う風景の中で人の姿は小さく、それは人間のちっぽけさを伝えるためのカットなのかと錯覚してしまう。「こっから見る東京…やっぱ格好エエなァ」と青木は言う。「高校辞めて出てきた東京はホンマ別世界で……なんやむっちゃエネルギーみたいのん感じて…」そんな青木の言葉にラストカットの意図を重ねようとした矢先、そのセリフが出てきたエピソードのラストカットが地下鉄の閉塞感漂うホームなのにドキリとさせられる。(つづく)
2022/10/16
阿部義彦
待ちに待った第二巻発売です。冒頭のテンパイポンチン体操に思わず反応してしまいました。グッドモーニングですよね、オナッターズもいましたね。閑話休題。 ため息ついて時間が止まりました。全7話がそれぞれ違う所を目指す様に拡散して、最後の見開きの一コマで美しく収束する、何とも言えない表現力。 幻視、幻覚をも作品内にさり気なく取り入れて、えも言われぬ異化効果を生み出してます。誰一人同じ考えの人間など居ない事の諦めと希望がふつふつと湧き上がります。塩澤という狭量な人間の過去、幾つもの出会いと別れ。ゴオオオォー
2022/09/30
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