螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)
螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『蛍』は、予備知識なしに読み始めたものだから、最初はデジャ・ヴュかと錯覚した。『ノルウェイの森』だったのだ。しかし、この作品は『蛍』のままでも、十分に味わい深いし、エンディングの蛍のシーンは、はかなくて美しい。これに続く『納屋を焼く』は、まさしく「リアリティは細部に宿る」という感じだ。たとえば、「彼」とマリファナを吸う場面で、「僕」が「学芸会の舞台のざわめきとか背景のボール紙に塗られた絵の具の匂い」を思い出すところなど。それとは逆に、こうした細部のリアリティがグロテスクに展開するのが『踊る小人』だ。
2012/07/11
おしゃべりメガネ
時を遡ること今からおよそ30年も前に刊行された本作は、ご存じの方も決して少なくはないと思われるあの『ノルウェイの森』の原点?ともいうべき短編「螢」が収められています。30年前も今も村上春樹さんはかわることなく、ただ読んでもよくわからない作品を書き続けていることが改めて実感できました。後半に読み進めれば進めるほど「???」な世界が展開され、後半はひたすら文字を追うことに必死になっていました。しかし「納屋を焼く」や「踊る小人」は比較的、わかりやすい村上ワールドを楽しめましたが、やっぱり難解かつ不思議でした。
2015/11/22
Aya Murakami
令和元年新潮文庫紅白本合戦 踊る小人がなかなかの恐怖物。音楽そのもののように踊る小人は魔性の魅力です。美しく見事な踊りにはもちろん毒があって思い人がいる主人公を破滅の道にいざないます。 革命前は戦前、革命後は戦後のオマージュでしょうか?小人の魔力は革命前の宮廷でも暗躍したとか。美しさ魔力の恐怖はいつの時代もかわらないということか。
2020/05/08
ショースケ
感想を書くのが難しい。全体的に不思議な世界観とトリッキーな話しでいっぱいだった。『蛍』はノルウェーの森の原型という。そういえば同じ空気が漂っていた。最初からそういうつもりだったのだろうか。それともその後ノルウェーを考えたのだろうか。『納屋を焼く』は深読みするとゾクっと怖い。納屋は焼けず女が消息を絶った…コワッ。『踊る小人』も最後は逃げ回る羽目になった…コワッ。昭和50年代の村上春樹の「小説を書くことはとても好きです」の言葉にグッときた。読友さんのおかげで昔の村上氏の世界観を垣間見れた。面白かった。
2021/08/17
優希
日常の喪失をリリカルに描いているなと思いました。『蛍」は『ノルウェイの森』の原型となっているだけに興味深かったです。戻ることのない思い出の中からすくい取った眼差しや想いが染み渡るような短編集。懐かしさが包み込む雰囲気が好きだと感じました。
2017/07/07
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