日出る国の工場 (新潮文庫)
日出る国の工場 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
安西水丸とのコンビだが、今回は文章中心で絵は補足的な程度。全体的には、なんといっても目の付けどころがいい。そして、ここでの成果(アデランス)を村上春樹は『ねじまき鳥』にちゃっかり活用している。篇中で1番面白かったのは「科学標本」、1番考えさせられたのは「小岩井農場」の「経済動物」という視点。それにしても牡牛たちは可哀そうだ(牝牛だって、けっして幸せという訳ではないが)。作りもののダッチ牝牛に精液を絞り取られた揚句、ハンバーガーだなんて。また、ここでは日本の農政についてもあらためて考えることになる。
2012/09/18
ハイク
春樹と水丸コンビで会社の工場見学をレポートした。ここには7社の工場見学を書いてあるが、「小岩井農場」と「アデランス」が面白い。小岩井は3人の設立者の頭文字を採ったとは初めて聞いた。小野義貞、井上勝と岩崎弥之助だ。牡牛と牝牛の役割、経済動物と言われるゆえん等成る程と納得。アデランスについては断片的な知識はあったが、どのような工程で完成するのかが良く理解できた。村上春樹と言う作家は才能に恵まれていると感心する。幅広い分野に好奇心を持ち、我々読者に分かり易く面白く説明してくれる。本当にありがたい存在だである。
2015/09/07
HIRO1970
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎リハビリ15冊目。お二人の共著は通算4冊目です。何と題名に全く偽り無く、1986年当時の日本国内製造工場が7ヶ所も出てくる工場見学のみの作品でした。ビックリです。既に鬼籍である水丸さんの絵が懐かしく心に沁みました。33年も前の話になるのですが、読み終えてみて、何となく今でも存続してそうな工場が多いような気がしました。結構長めの時間軸で選出された訪問先なのかなと思えました。遠い未来で文化資料的価値が出るかもですね。
2019/07/15
mitei
村上春樹が今は大阪の住道にある消しゴム工場に見学に行っていたことを始めて知った。あまり専門的に作り方を解説しているわけではないが普通の人が普通に観に行って勉強しましたって感じの一冊だった。
2011/07/10
催涙雨
村上春樹の工場見学エッセイ。取材したのが1986年ということもあり、文章も内容もわりと時代がかっている。この頃の工場見学の空気はもう実地に体験することは絶対にできないものなので、そういう意味合いでいえば案外貴重なものなのかもしれない。工場のセレクトも独特だし、村上春樹の文章もクセのあるものなので、工場見学と聞いて連想するイメージとは少し異なるが、そこが良さでもある。
2019/08/07
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