神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
阪神淡路大震災があったのが1995年の1月。これら6篇の連作短編は地震後、即座に書かれたのではないが、村上春樹にとってはなんらかの形で、その未曽有の経験を決済しておく必要があったのだろう。いずれの作品も間接的にだが、この地震に関わりを持っている。巻頭の「UFOが釧路に降りる」が、もっとも不可解な部分を有していて哀しみも深いが、物語を重ねるごとに希望への展望が開かれていくように思える。巻末の「蜂蜜パイ」の淳平は、作家自身にいくぶんかは重なり合うし、畢竟は「書く」ことにおいて哀しみを超克していくしかないのだ。
2012/11/24
青葉麒麟
今の日本の状況にどんぴしゃだと思う。他の村上作品に比べるとかなり読み易くて判りやすかった。【みみずくん】を君づけで呼ぶ【かえるくん】が素敵。
2012/02/23
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️村上さんの短編集です。こんな表現使った事無いけど、珠玉の作品ってこんな作品の事を言うような気がします。どれも神戸の震災に触発された感じがあり、全く表現描写は違うのですが、もの凄く引き込まれてしまう、素晴らしい作品でした。様々な時間軸の中で掛け違ったボタンの様な物が時には明確に時にはぼんやりと感じられました。名作です。
2014/05/06
ミカママ
【2016年読み納め&再読】初読みにするつもりだったんだけど、このやり切れなさは、大晦日の今日にふさわしかった。「いくら待ったところで、いくら考えたところで、ものごとはもう元には戻らないだろう」春樹さまの黙示録。
2017/01/01
gtn
「タイランド」の一編。牡と牝が偶発的に出会い、交尾を行い、すぐその場で別れる北極熊。一瞬一瞬の縁でつながっていくという意味では人間と変わらない。理はそれとして、作中「私たちはいったい何のために生きているのか」との問いかけがある。それに答えるには、確固たる哲学に求めるしかない。著者はその答えを示唆していないが、諦観していないことを信じる。
2018/05/27
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