村上ラヂオ (新潮文庫)
村上ラヂオ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
これは2000年3月から1年間、雑誌「anan」に連載された短いエッセイ集。じゃあ、『村上朝日堂』のシリーズとどう違うのかというと、もっとも大きなのは、これが掲載されたのは若い女性向けの雑誌だったこと。そこで、挿絵もいつもの安西水丸ではなくて、大橋歩が起用されることになった。安西水丸って、「anan」の編集部に、女性向きではないって判断されたのだろうか?それはともかく、大橋歩の版画はなかなかいい感じ。その一方で、村上春樹の書き方はいつもと同じスタイル。彼には掲載誌の違いよりも、まず、自分があるのだろう。
2012/07/08
やすらぎ
不思議と古さを感じない五十のエッセイ。雑誌ananの読者層に向けて、押し付けず拘らず軽やかに綴り、爽快に読み進められる。柳の木が好きで庭に植えてもらった村上春樹さん。人生は人の事情にはお構いなく勝手に流れていく。風に吹かれて靭やかに、雨に打たれても柔らかにありたい。仕事もお金も大事だけど本気でじっと星を眺めたりする気持ちが大切。感情から時に転げ落ちたりするけど、それも自分。空の上ではブラッディ・メアリを。五年に一回のすき焼きを。ズズズゥとパスタを。コロッケとの和解を。楽しいな読書。大橋歩さんの絵とともに。
2023/07/08
おしゃべりメガネ
久々の村上春樹さんエッセイです。雑誌『anan』に1年間、掲載された作品とのことですが、長編からは思いもよらない?作者さんのリラックス?した素顔に楽しませてもらいました。ちょいちょい出てくる奥さんとのカラミがなかなかユニークで、クスッとなります。春樹さんが音楽について書いていることで、とても印象に残った部分を-【常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた深く優しい個人的な情景がある】-確かに音楽って、その曲を聴くと楽しかったことやツラかったことなど、ビックリするぐらい鮮明に思い出されますよね。
2017/09/08
夢追人009
村上春樹さんの文章と大橋歩さんの版画で構成された50編収録の好エッセイ集ですね。本当に素晴らしい内容でお世辞抜きにして全部の頁が心から楽しめましたし今後も何度でも読み返せそうな気がしています。大橋さんの素朴なイラストもそっと文章に寄り添って心を癒やしてくれますね。村上さんは食べる事、古い音楽を聴く事、動物を愛する事、風景を愛でる事、等々の全部をひっくるめて失敗さえも良い思い出と捉えながら過去・現在・未来の人生を肯定的に愛されているのだなと強く感じましたね。コメントで順に短い文章での要約に挑戦してみますね。
2019/01/14
ハイク
村上春樹の短編を何冊か読んだ。週間朝日の連載をまとめた本だ。今回は女性週刊誌の1年間連載だ。長編小説と違い短編は気軽に楽しく読める。同じ人が書いたのかと驚く文章だ。また内容も種々雑多である。音楽もあるし映画もある。日本だけでなく海外で経験したのもある。「焼かれる」という題でブラジャーの話があるがよく書けるものだと感心する。著者の着眼点、妄想力等すごいものだ。「ドーナッツ」の話しでも博識には驚く。勿論様々な話題が述べられているのですぐ忘れてしまう。少しの時間がある等暇つぶしには持って来いの短編随筆である。
2015/08/31
感想・レビューをもっと見る