ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)
ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫) / 感想・レビュー
アキ
和田誠のイラストに、村上春樹が文章を綴る。そして村上春樹のジャズLPコレクションから厳選の一枚を紹介する。ジャズに詳しくないので、ここで取り上げられたジャズ・ジャイアントは必ずしも有名どころばかりとは言えず、だからこそ味のある本になっているのでしょう。仕事にする程ジャズにのめり込んだ春樹氏と、音楽を仕事にせずイラストの道を選んだ和田誠の趣味が一致してるのは、60年代に青春を過ごした共通点だけではないのでしょう。ジャズ愛に溢れた一冊です。村上春樹にとってのthe jazzとは、スタン・ゲッツなのですね。
2023/09/06
やきいも
和田誠さんが書いたジャズミュージシャンのイラストに村上春樹がエッセイを加えた本。短編小説のようなあざやかな光を放ち、何度も何度も繰り返し読んでしまう箇所。それはマイルズ・デイヴィスに関する文章(本書の102ページ)。 ジャズへ抱く村上春樹の愛情がぴしぴしと伝わってくる。「世界に恋をする」(本書76ページ)ことの熱さを伝えてくれる本。
2016/10/23
はるを
🌟🌟🌟🌟☆。著者のお気に入りのジャズプレイヤーについて書かれたエッセイ(?)。ジャズを聴く俺は索引的にこの本を読んだ方が効果的だと思った。べた褒めする訳でもなく思った事、感じた事をなるべくそのまま書こうとしている事が伺えた。しかし、よくもまぁこれだけの人数のプレイヤーに対して全員違うアプローチで書けるもんだ、と思った。中にはちょっとなに言っているのか解らないヤツもあったけどね。
2019/04/18
Kajitt22
和田誠のイラストレーションによるジャズメンのポートレートに触発され、村上春樹が文章でデュエットした粋な1冊。小澤征爾との対談もそうだが、村上春樹の音楽の聴き方の深さには、何度読んでも圧倒されてしまう。その深い聴き込みをジャズらしく洒脱で粋な文章にしている。後半、シナトラとベネットを比べて、ジャズには狂気や自己矛盾や挫折や悪意や妄想や崩壊の影がなくては、の一文が印象的だった。確かにシナトラにはある。再読。CDを何枚かポチってしまった。
2019/07/02
めしいらず
フリーがジャズ喫茶を席巻していた当時、音楽を小難しく聴く人々のありように背を向け、ムラカミ青年は自分の嗜好の趣くまま。だから彼がジャズ音楽を語る時、そこには嫌味が生じなくて好もしい。ビリー・ホリデイ、ジェリー・マリガン、レスター・ヤング、ルイ・アームストロングの章が素敵。LPが高価だった時代。やっとの思いで買った一枚を心を込めて何度も聴く。何て不便で良き時代だろう。好きな曲だけを集めて容易く持ち歩ける昨今。その一枚、その一曲に傾ける情熱はどんどん希薄になっているような気がする。便利=幸福とは限らないのだ。
2018/11/30
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