東京奇譚集 (新潮文庫)
東京奇譚集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2005年に相次いで書かれた5つの短篇を収録。タイトルの「奇譚」は、たしかにそうでないことはないのだが、最後の「品川猿」を例外としてむしろ現代アメリカ文学の翻訳のような趣きだ。物語の奇譚度は、概ね収録の順で上がって行く。どれも、しんみりとした風情の実に味わい深い物語だ。そのいずれの物語にも、日常の中の微妙な接点に展開する微かな悲しみと孤独と、そして一条の光とが同居している。これらは、あるいは村上春樹の短篇のベストかもしれないと思う。ほんとうに、どの1篇も捨て難い魅力に満ち、内からの光を放っているのである。
2013/02/04
ehirano1
何だか吸い込まれるように物語の中に入って行った感じがして、各題とても興味深く且つ、不思議な気持ちに包まれながら楽しみました。最後の『品川猿』だけが未だに消化できずに霧の中をさ迷っています。これはいつものメタなのか?もっと違うモノなのか?表題通りの奇譚なのか?
2021/12/10
遥かなる想い
2005年の作品。 村上春樹がつむぐ不思議な話の短編集である。 調律師の話・鮫に息子を殺された母の話・ 消えた男を探す話・自分の名前を忘れる女の話 .. どれもが些細な話であり、すぐ忘れる話なのだが、軽妙な会話も含めて 村上春樹の世界で あり、読んでいると不思議に心が和らぐ、 ある意味 安定した村上ワールドだった。
2017/03/03
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️学生時代以来ですから、20数年ぶりに村上さんの本を読みました。かなり久しぶりですが、相変わらず読みやすくてサラッと読めちゃいました。著者の本は読んでる時は面白いと思うのですが、後でどんな話だったか覚えていないものが、個人的には多いので、今回も何と無く同じパターンの様な気がします。
2014/04/20
tokko
現実と非現実が混じり合っている空気が村上さんらしい。何ということでもないように、違和感もなく、気がつけばメタフォリカルな世界にいる。読んだ後もしばらく頭がしびれて夢から覚めたような気分になった。「名前」を「猿」に盗まれることは何を意味するのだろう?
2011/07/02
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