猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)
猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小説の中でのヒエラルキーは、タイトルそのまま。すなわち最上位が猫で、次が庄造、そして最下位に品子と福子の二人の女という構図だ。全体が濃密な関西方言で語られていることが、この小説に独特の柔らかさと、惚けた味わいとを与えているのだが、関西弁ネイティヴでない人には巻末に付された注が必要であるかもしれない。それにしても、谷崎による庄造の「猫可愛がり」の表現は、実に徹底していて見事というほかない。また、庄造自身の造形も後の織田作之助『夫婦善哉』の柳吉に繋がって行くような、かつての典型的な関西の憎めないダメ男だ。
2013/05/30
馨
初めての谷崎潤一郎作品でした。 なんと言ってもリリーですね!リリーのしぐさや気持ちが可愛すぎて・・・庄造の気持ちがちょっとわかりました。前妻と庄造母にも共感出来たけど、今の嫁はちょっと共感出来なかったかなぁ・・。リリーに会いに行くのを通じて庄造が最後に孤独感というか、何かやるせない気持ちになるくだりは良かったです。
2014/11/15
小梅
これは「庄造と三人のおんな」だな。そしてリリーは、その時々自分にとって一番良い相手にのみ尾を振る最強のおんな…いや、女王様。面白かったです。
2015/02/13
ゴンゾウ@新潮部
猫に翻弄される主人公とその妻と前妻をユーモアに描いている。愛妻よりも母親よりも猫を愛すし溺愛する主人公。その男をつなぎとめる為に愛猫の争奪戦を繰り返し嫉妬する女達。初めは嫉妬の対象だった猫に甘えられると心を許してしまう女。猫の為にせっせと尽くす大人たち。あまりにも滑稽で情けなくなる。世間の愛猫家とはこんなものなのだろうか。この大人たちに焦点をあて文学作品に仕上げた谷崎潤一郎はさすがである。
2015/12/23
Gotoran
隷属の愛、フェチズムの巨匠の著者が、昭和初期の阪神地域を舞台に、雌猫とその雌猫を溺愛する男と(その猫に)嫉妬する二人の女の痴情の世界を描く。外来種の雌猫「リリー」、人懐っこいものの仕事嫌いの怠け者の「庄造」、その現在の妻「福子」、「庄造」の母親「おりん」に追い出された元妻「品子」、主要人物の関西弁での会話が艶やかさと滑稽さを引き出している。「品子」に引き取られた「リリー」が「品子」に馴れる過程が印象的であり、最終の「リリー」と再会した後の「庄造」の独りよがりの独白が情けなくも切ない。「愛とはほかならぬ↓
2013/10/06
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