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吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)

吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)

吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)

作家
谷崎潤一郎
出版社
新潮社
発売日
1951-08-14
ISBN
9784101005065
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吉野葛・盲目物語 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

タイトルに掲げる2話を収録。「吉野葛」は、若き日の谷崎が吉野の奥地、秘境とも言うべき國栖(くず)を訪れた折の随想。ここは南朝と義経、静御前に所縁の地であった。「盲目物語」は語りに特徴を持つ。信長の妹、お市の数奇で悲劇的な一生を、側で見届けた盲目の老人が語る形式をとる。芥川の「地獄変」などと同じ形式をとり、過ぎ去った物語としてロマネスクな面影が全編に揺曳する。それは夢幻能をも想起させ、したがって鎮魂の響きをも帯びるのである。

2021/10/01

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

秋の澄んだ空気に色あかく映えるもみぢ葉、なんの音もしないようなたくさんのいきものの気配が満ちるような。高く晴れた空のなか何処までも歩いていきたい、いつまでもここにいたい。初めて訪れる場所なのになぜか懐かしくて、なつかしさとかなしさと幸せと、満ちる気持ちと渇き求める気持ちが一緒になってぎゅうと胸が狭い。秋がきて空気のにおいが変わるたびやってくる帰りたいような気持ち。その気持ちとあわせて心にずっとのこしておきたいような、美しい美しい文章と郷愁。私の耳にもコーン、と高く抜ける音が響いてのこった。

2020/11/08

優希

言葉遣いが美しいです。永遠の理想の女性への憧れ、戦国の人々の喜怒哀楽の描き出し方に引き込まれました。日本的なものへの目を余すところなく注いだことで描き出された作品と言えるでしょう。

2018/04/10

アキ

「吉野葛」私と友人津村が吉野を訪れ、私は小説の題材を津村は亡き母の面影を辿る物語。南朝の伝説、妹背山婦女庭訓、二人静など吉野が舞台の話に、秋の吉野の描写が映える。柿の実、谷筋に吊り橋、色彩豊かな山の紅葉。津村は琴と母に似た妻を見つけ、小説は書かれず仕舞い。「盲目物語」めしいのあんまの語るひらがなの多い語りの文体。お市の方に仕え、長政、勝家、秀吉をあんまからの視点で物語る。二作品の文体は、まるで異なっていて、琴や三味線と謡曲が出てくるのが共通点。谷崎文学の懐の深さを感じた。

2020/10/12

Gotoran

「吉野葛」:後南朝を題材とする歴史小説を構想していた私が、秋の吉野で案内役の友人津村から打ち明けられた母恋の身の上話に惹かれていく。随所に古の吉野の風景を描写しならが幻想的な雰囲気が醸し出されている。「盲目物語」:信長の妹お市の方に寄り添い仕えていた盲目の按摩師の語りという体裁。小谷城落城の時の夫・浅井長政の死、柴田勝家とお市の方の婚礼、勝家の死、などなど、お市の方の悲劇的な生涯を主軸に戦国に生きた人々の喜怒哀楽が描かれている。「吉野葛」は岩波文庫版で既読ではあったが、大谷崎中期作品を読んでみた。

2020/07/30

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