新ハムレット (新潮文庫)
新ハムレット (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作は、太宰の最初の長編小説であるらしい。これを読むと、太宰はやはり短篇にこそ本領を発揮するのかとも思う。では、同じ中期の『右大臣実朝』や後期の『斜陽』はどうなんだということになる。あれらは、やはりいいなと言ってしまう。そうすると「新ハムレット」は気に入らなかったのかというと、実はそうなのだ。なんともまだるっこしい言い方になってしまったが、それは久しぶりに太宰を読んだせいだ。さて、本編だがシェイクスピアの原作から枠組みと、人物設定を借りて、後は太宰流に自由奔放に書いたという印象だ。⇒
2019/06/17
ゴンゾウ@新潮部
太宰中期の作品集。再婚し私生活が安定している時期でどの作品も太宰特有の暗さはなくユーモアに富んおりとてもレベルが高い。「女の決闘」は他人の小説を独自の解釈を加えて別な作品に仕立てていく様を実況を加えて書かれておりとても技巧をこらした作品になっている。「新ハムレット」はあの悲劇が彼に手にかかるとコメディになってしまう。その中にも彼の過去に対する後悔や批判が加えられていている。「乞食学生」「古典風」「待つ」も傑作です。太宰治の無限の才能を感じた。
2014/12/30
青蓮
物凄く久し振りに再読しました。「古典風」「女の決闘」「乞食学生」「新ハムレット」「待つ」5編収録。実験的な風合いがある本書。「古典風」は「斜陽」の習作でしょうか。「女の決闘」も斬新な作風で面白かったです。「新ハムレット」は人間の持つ複雑な内面を見事に描ききってる傑作だと思います。そして「人間失格」への序曲にも感じました。本家の「ハムレット」はまだ読んだことがないのでいつか読みたい。「待つ」の最後の一文にぞっとしました。「教えずとも、あなたは、いつか私を見掛ける。」
2015/09/18
Willie the Wildcat
短編の妙を感じさせた『待つ』が印象的。焦燥感ではなく、希望であり夢。時勢の暗雲を取り払う若い力が滲む。『古典風』は元々のタイトル『貴族風』のほうが、しっくりくる気がする。最後の一文に人間の矛盾。時が心を癒す。『女の決闘』はその矛盾を逆手に取った三者三様の自己満足を対比。一方、『乞食学生』はその矛盾を逆手にとり、白日夢という形で決着。〆は カルピス。対照的に『新ハムレット』は、矛盾の潜む人の暗部に焦点をあてた心理交錯と綾が高まる中での灰色決着。叔父と決着をつけ、何もかも捨てて城をでる・・・。ベタかなぁ。
2018/08/22
nakanaka
短編集。「ハムレット」を読んでいればもっと楽しめたのかもしれませんが未読でも十分に面白かったです。古典が元になっているにも拘わらず上手く現代の生活に当てはまる事柄を盛り込んだりおり太宰色が色濃く表れているとはっきりわかる内容でした。旅立つ息子に「遊学の心得」を教える父の場面が特に印象的です。個人的には「乞食学生」が独特の世界観で好きです。最後の夢オチに驚きました、虚栄心の塊のような三人のやり取りが笑えます。「待つ」は短いものの深い内容でした。何かをただただ待つという状況がよく分かりませんが共感できます。
2018/06/17
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