近代絵画 (新潮文庫)
近代絵画 (新潮文庫) / 感想・レビュー
A.T
後悔先に立たず、もっと早く読みたかった。でも、今読めてよかった。ボードレール、モネ、ゼザンヌ、ゴッホ、ゴーガン、ルノアール、ドガ、ピカソ…なぜ近代絵画はフランスを中心に隆興したのかがわかりそうだ。サロンや社交界に認められずにフリーで芸術家を自負していけた、現代に引き継ぐアートの世界のシステムが19世紀末に展開。どんなやり方もテーマもアリ、という近代絵画を生々しく捉える。世界観を無から立ち上げ追求し続けた作家たちの人生が作風に投影される。小林秀雄氏の深読み、凄いです。ピカソの断捨離と真逆の生活感に特に納得!
2022/10/17
梅崎 幸吉
小林秀雄が近代画家達の魂に親和しつつ即し即さず心眼にて描いた著作。特にピカソの章は彼自身の意識状態と重なっている。比類なき魂の評論。「芸術家は最初に虚無を所有せねばならぬ」と。「呪われた道」とは「虚無的世界観」の異名でもある。これは今日でも打破されてはいない。
2024/06/06
sabosashi
小林秀雄は批評の王様だとみなす人たちもいる。しかしながら遅かれ早かれ小林は追い越されていく。自己韜晦の度がはげしい。屈折さに人を取り込もうと企てる。この「近代絵画」では議論自体についていえば、古めかしくて、それを問うてもしかたがない。いくら文芸と美術とにアナロジーのようなものがあろうとも、議論にムラがある。 小林の頭は冴えきっているのか。おそらくそうかもしれない。批評の大本には感性と理性のせめぎ合いがあるはず。
2024/01/15
ハチ
苦戦しながら読了。 一文一文がズシっと重力を持っていながら、鋭く頭が大喜び→疲弊。 特に、セザンヌの項が印象に残った。 シャイ過ぎるセザンヌが口下手で、なんとか絵画で持って自分を表現していったであろう考察が愛に満ち溢れていた。 本物の芸術批評に叩きのめされた。 また挑みたい。
2023/05/12
井蛙
批評家・小林秀雄は、批評家の性急な総括が常に取り逃がしてきた天才的個性の〈朴訥さ〉とでも言うべきものを掬い上げようとする。芸術的創作を構築的な知性の準備運動によって始めようとする人間は、天才の亜流でしかなく、平凡な批評によって捉えることのできる者もまたこのような意識的な追随者でしかないからだ。そういうわけで、モネからピカソに至るまでの天才画家たちの、密かな個人的格闘(それはいかなる知的総括にも先行する)を復原しようとする小林の試みは、まさに小林自身の非凡な才と共鳴することによってのみ可能となったのである。
2021/03/07
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