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明暗 (新潮文庫)

明暗 (新潮文庫)

明暗 (新潮文庫)

作家
夏目漱石
出版社
新潮社
発売日
2010-01-01
ISBN
9784101010199
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明暗 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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優希

漱石未完の絶筆ですが、文学として完成されていると思います。濃密な人間関係と心理描写がドロドロとしています。明暗という言葉通り、他者と自分の関係性で成り立っているドラマ性を感じました。自分の正直な感情が剥き出しになる中で、津田だけが心を閉ざしているところにこの物語の哀しみが象徴されているのではないでしょうか。ここぞとまでにさらけだされたエゴイズム。完成されていたらどのような作品に仕上がっていたのか興味深いところです。

2015/09/09

ケイ

「こころ」では、結婚する女性の心が全く取り沙汰されていないように思ったのだが、こちらでは女性が主張する。妻は、夫の友人ともやり合う。夫と言えば、「それから」の代助を彷彿させるような金銭に関しての考え方をしている。小林のせいかもしれない。ドストエフスキー視点が入る。視点が妻にいったり夫にいったりするので、2人の心持ちが分かってくるから、妻に肩入れしてしまう。漱石は、結婚できなかった想い人がいて、一緒になっていた場合に起こる破綻を常に描いていたのかと思ったりもした。未完。

2023/06/21

のっち♬

結婚半年のギクシャクした夫婦を中心にエゴが渦巻く人間劇。相互に密接に規制し合い、金力や自尊心の浮上で関係が益々粘つき、時間感覚が麻痺する緊密な心理小説。視点は知識層でも固定的でもない。平凡な家族内で他人的な相手からの軽蔑を恐れる余り至純至精と自責の間で痙攣しいざ発露すればつけ込まれる切迫感、小林に代表されるドストエフスキー的な饒舌な熱弁やポリフォニー、位地の急転など人間の実存や一寸先未来の不安定さを追究した濃密なリアリティは新境地を感じる。何処までいっても片付かない自由と人間の因果応報、未完自体が象徴的。

2023/05/28

ゴンゾウ@新潮部

漱石の未完の遺作を読了した。あまりのぶ厚さに読むことを躊躇していたが読み出したら小説の世界に引き込まれた。別れた女性を忘れられずに別な女と結婚してしまった津田。夫の過去に疑問を持つ賢い新妻延子。新婚の夫婦のわがままに振り回される親類達。彼らの駆け引きがまどろこしくて滑稽だ。やっとクライマックスに動き出したのに絶筆とは。とても残念だ。

2017/02/26

(C17H26O4)

未完。他者との関係性から人物が立ち上がってくる。利己主義的な会話は常に駆け引きであり、緊張感を孕んでいる。気になるのはやはり津田。彼が見下している小林の言葉が津田の今後を予感させる。津田はかつての恋人清子との計略的な再会に思いのほか心を乱されたことを発端にして、自己の内部に向き合うことになっていくのか。小林の矛盾する態度も気になる。津田に対しての攻撃的な言葉から一転しての感謝の涙。人対人の明暗、人物個々の内部の明暗は一部であり、金や愛情などのテーマと重層的に絡み合って全体の明暗へとつながっていく気配。

2021/09/11

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