数学する人生 (新潮文庫)
数学する人生 (新潮文庫) / 感想・レビュー
やいっち
「春宵十話」は、高一の中間テスト後の解放感で読んだ。数学に憧れていたピークでもあった。これだけの天才となると、俗っ気が抜けて仙人の域。数学は、理系の極とされる。だが、数学は物理学などと並ぶものだろうか? 物理学者の中には最後まで進路の選択肢に数学があった方も少なからず。岡氏の発想や生き方などを観ると、宗教家とまでは言わないとしても、芸術家じゃないかと思えてしまう。美的センスの極みが数学の世界を切り拓くのだろう。付言すると、「春宵十話」はある意味 我輩に数学することを諦めさせた忘れがたき本なのである。
2021/03/18
バイクやろうpart2
岡潔さん作品1冊目です。この本を手にするまで "日本数字史上最高の数学者" とは、いざ知らず日本人ながら恥ずかしく思いました。作者さんの多変量解析は、学生時分、ずいぶん利用したので、少しだけ親近感湧きながら読ませて頂きました。数学者なのでカチカチの文章かと思いきや、なんとも柔らかい温かみある文面で入り込み易かったです。が、天才的な数学者さんです。『定義』を徹底して追求される姿が、凡人には少々難解でした。あらためて目に映る事象を、先入観持たずフラットに考えることの必要性を感じた一冊です。
2020/03/03
マリリン
最初の写真が何とも言えず良い。数学者である岡潔の講義から始まる本書を読み、生活の全てから岡のいう情が伝わってくる。右の内耳に関心を集めると情緒がわかるという。無明・不生不滅と数学と関係ないような話であるが、数学をこのような視点からも研究していたのかと思うと、岡潔という人間そのものがとても魅力的に思えてならない。『博士の愛した数式』を読み、数式が美しいと感じたのは数学の根底にあるものが、岡の思想にあるものと通じるからなのだろうか。岡曰く、数式で心を表現する…。一生、二生、三生…良い言葉だ。焦りが消える。→
2019/08/27
えーた
前人未到の業績を残した日本の大数学者・岡潔のエッセイ・講義録などを収めた一冊。「数学する」というタイトルとは裏腹に数式などには一切言及することなく、代わりに道元・芭蕉・芥川等をヒントに非常に形而上学的かつ幽遠な思想が開陳されている。これはね、私のごく個人的な意見なのですけど、所謂「引き寄せの法則」のような本を普段よく読まれている方なら岡氏の考え方がスッと、頭と心に入ってくるのではないかと思う。また、この本の責任編集者・森田真生氏による解説が大変素晴らしい。これだけでも手に取って本当に良かったと思いました。
2023/11/10
Y2K☮
全てはひとつ。情と情趣は世界と自分、樹木と葉の関係性。自他を分けない。エゴを克服した先の真我。喜怒哀楽からも距離を取る。俗物!世間体だ!というお叱りの声が頭に焼き付いた。ご結婚されてお子さんが三人もおられて、それでも大学を離れ、講師職で糊口を凌ぎつつ研究に没頭した。編者の森田真生はどんなに忙しくても午前中は必ず数学に使うと云っていたが、岡潔もそうらしい。私も今は朝に書く事が多い(たまに夜に書くといい刺激になる)。何かのためじゃない。好きだから打ち込む。必要なのは紙と鉛筆といくらかの本。確かにそれで十分だ。
2020/06/05
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