少女葬 (新潮文庫)
少女葬 (新潮文庫) / 感想・レビュー
茜
シェアハウス・グリーンヴィラで出会った二人の家出少女の関井眞実と伊沢綾希。二人の運命の明と暗を分けたのは何だったのか?二人の視点から描かれているパートが交互に進む中で眞実の部分は読んでいても非常に危なっかしく不穏で、対照的に綾希のパートはホッとさせられる。その構成が絶妙で読みだすと止まらずに一気に読んでしまった。印象に残るのが綾希の考え方、道を踏みはずすのは一瞬だ。でもそれを立て直して軌道修正するには、何十倍もの時間がかかる。眞見が少しでも状況を考えていれば結末は違ったのかもしれない。
2021/10/23
『よ♪』
最悪の読後感。いや、批判ではない。寧ろ心の奥深くまで突き刺さった──。貧しさに喘ぐ二人の少女の明暗が分かれる。ボタンのかけ間違え程度のほんの僅かな差。それなのに──。"明"はささやかな幸せ。"暗"は読み進めるのを躊躇うくらい残酷な結末。作中で少女が言う"自己責任"という言葉。弱者が抜け出せない社会の構造。これは問題提起なのか?…こういうの苦手だ。心がざわつく。キリキリと痛む。奥深くまで突き刺さり、グリグリと掻き毟る。こうまで残酷でなければひとの心には響かないだろうか…。否定できない。認めたくはないが──。
2019/09/23
★Masako★
★★★★ 最初から最後まで重く苦しく、読了後も暫く悶々としていた。家に居場所が無く、家出をして脱法シェアハウスに住み始めた16歳の少女・綾希。同室になった眞実に少しずつ心を開き絆を深めていくが…。明と暗。二人の運命を分けたものは、正しい方向に導いてくれる人たちと出会ったか出会わないか。強い意志と希望を持って泥沼から這い出そうとしたからこその出会い。泥沼に居場所を見つけ底に沈んでいった少女が悪いのか? 疑うことを知らない優しい少女に何が出来ただろう。最終章の明と暗に分かれた二人の対比が痛々しく辛かった。
2019/07/03
JKD
堕落と崩壊に満ちたシェアハウスに住み着いた綾希。絶望と狂気が入り交じる荒んだ世界でひたすら我慢して前を向いて生きようとする姿がたくましい。同室の眞実との蜜月期もつかの間、お互いの求める方向へ歩み始めたとき、すれ違いが始まっていく。間違いに気づいたときはすでに手遅れ。眞実が地獄へと落ちていく様が読むだけで息苦しくなる。そして手が震える。なんとも残酷な物語でした。
2019/05/01
キンモクセイ
2人の少女は何処でどう道が分かれたのか。多分スタートは同じような場所だったはず。ひとりの少女にはキラキラ輝いてみえる世界、それは上部だけの事。何も疑わない少女には見るもの全てが眩しく憧れだった。でも、それはまやかし。そういう弱者を食い物にする汚い大人がいることを忘れないで。じゃあ、どうすればいい?と問われても答えられない。そんな経験もなくギリギリのとこで生きてこなかったからだ。何を言っても私の言葉は伝わらないかもしれない。家から逃げても行き着く先も地獄。出会う人、タイミングで人生の生と死が分かれしまった。
2020/08/23
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