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遠くの声を捜して (新潮文庫 や 28-9)

遠くの声を捜して (新潮文庫 や 28-9)

遠くの声を捜して (新潮文庫 や 28-9)

作家
山田太一
出版社
新潮社
発売日
1992-11-01
ISBN
9784101018195
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遠くの声を捜して (新潮文庫 や 28-9) / 感想・レビュー

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naoっぴ

ごく普通の生活をしている男・恒夫にあるときから女の声が聴こえ始める。聴こえている(感じとれる)この声は誰のものなのか。この物語を魂や霊による美しいファンタジーと読むこともできるだろうが、私の身近には恒男のような体験をした人がいただけに、この感情が手に取るようにわかりとても衝撃的だった。少しずつ恒夫の行動が奇異になる。だけど本人は自分が変なわけではないのだと信じているこの辛さと危うさが実にリアル。謎めいたきれいなラストに救いを感じた。河合先生のお薦め本とのことですが、納得の一冊!

2017/04/12

おさむ

山田さんお得意の「大人のファンタジー」なのですが・・・ちと残念。男のマリッジブルー話風に始まり、クライマックスは過去の告白。ところが、しりきれとんぼのエンディング。「異人たちとの夏」もそうでしたが、亡霊との交流というテーマだとこんな終わりかたにならざるを得ないのかも。

2015/08/30

きょちょ

アメリカ滞在中の体験、入国警備官という不法滞在者の悲哀と常に接する過酷な仕事(主人公は自身の感情を無理に抑え込んでいる)、こういったことで精神に異常をきたす物語と読むのが普通だろう。 「それ」は一体何者か? 主人公の「無意識」からくるもの、あるいは「幻聴」、いろいろ想像できるが、私は「黄泉の国の人」と想像して楽しんだ。 実に面白いのは、「結納」のところ。 絶対に我慢しなくてはならない「ある感情」、でも出しちゃいたい!って思う時あるよなぁ。主人公はこの「結納」の場面で思いっきり出してしまう。 ★★★

2017/01/24

Inuko

「声の女」は何なのか。どこから来てどこへ消えていったのか。私は、「恒夫が蓋をして押し殺していた気持」が人格をもって現れ出たのではと考えた。そして、おもしろいと思ったのは、お互いに聞こえるけれど見えないこと。視覚が遮られているとき、受容されている感覚や許されている安心感があるように思う。深い感情について、「油のように静かな」「色という色を辛抱強く混ぜ合わせた沼のように、あらゆる感情を含んでいて」という表現が素敵だった。また、恒夫が心の病気になっても孤立せず、周りの人々があたたかくてよかった。

ひさか

1985年刊の飛ぶ夢をしばらく見ない、1987年刊の異人たちとの夏、1989年刊の本作、遠くの声を探しては、ファンタジー三部作と言うらしい。前二作より、まとまりの悪い話のように思いましたが、インパクトは、大きかったです。声の人物ってホントにいるの?。心の中の声じゃないの?と考えてしまいます。少し怖さも感じて、心に残るお話です。

2014/11/08

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