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1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

作家
一木けい
出版社
新潮社
発売日
2020-05-28
ISBN
9784101021218
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1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫) / 感想・レビュー

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こーた

もっといいタイトルがあったんじゃないか(装丁も)、もったいないなとおもいながら読む。いや、この小説で描かれる人びとと同世代の、届けたい読者にはちゃんと届いていそうだから、いいか。デビュー作らしく、しっかりした文章で、良い書き手だとおもう。いずれもいつかどこかで読んだことのある既視感と、長篇だとダレそうなのが気懸りではあるけれど。略歴を見たら著者は大学の先輩で、たぶん重なってた時期もあって、おなじ風景を見ていたのかもしれず、情景や感性に僅かばかりの親近感を覚えるのはそのせいかもしれない、とおもったりした。

2021/10/06

さてさて

『あの日々があったから、その後どんなに人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられたのだと思う』。そんな思いの先の今を生きる由井。この作品では、由井の過去から今までの人生を彼女が関わってきた人たちの視点も加味した物語が描かれていました。視点が移って欲しい人物に視点が移らないもどかしさに苛まれるこの作品。描かれない結末にさまざまな想いが去来もするこの作品。「1ミリの後悔もない、はずがない」という二重否定の意味に心囚われる書名がどこまでも尾を引き、切なさと儚さの感情に読者を包み込んでいく作品でした。

2023/01/21

ゆいまある

凄い人に出会ってしまった。恋愛小説というカテゴリに収まらない。当たり前のように皆が与えられるものを持たなかった子供。父はアル中。精神病院に入退院を繰り返し回復の見込みはない。借金に追われて居場所を転々とする。保護者はいない。学校に居場所もない。そんな中学生が恋をする。他の登場人物も決して埋まらない欠落を抱え、何かに依存している。糞みたいな人生の中で、恋やセックスってどうしてこんなに甘いのか。それを書けるこの作者は何者なのか。切なすぎて泣けちゃうラスト。一木けいさん。今後も全部買って読む。

2020/10/23

まこみや

それぞれの登場人物が、作品ごとに、視点を替えて語る連作の短篇小説。痛みや哀しみや後悔を内に抱いて、表裏二つの自分を生きる人物像にざらりとしたリアリティを感じさせる。とりわけ、貧しさと苛酷な環境の中で、前を見据えながら他人に甘えることなく寡黙に生きる由井の姿は胸に迫る。最後、彼女に一条の光が射すような展開も読み手をほっとさせる。抑制と促進という緩急の間を取りつつ、人物に寄り添うような描写力にも才能を感じさせる。終わり近く有島武郎『小さき者へ』の引用の仕方も、やや出来過ぎの感はあるが、うまいものだ。

2020/09/27

のぶ

一木さんの本は過去に読んだ2冊が良かったので、本作も文庫化を機に読んでみたが、これも良かった。5作が収録された連作集。冒頭の「西国疾走少女」の主人公は訳ありで貧しい母子家庭に育つ女子中学生の由井。父とは共に暮らしていない。父の事情はやがて明らかにされるが、学校では除け者扱い。絶望的な状況の中で、由井を救ったのは、桐原という男子同級生に対する恋心。恋愛にせよ家族との触れ合いについても、とてもうまく描かれている。力強い美しさに溢れている女子中学生の物語。その他の4篇も人物が良く描かれていた秀作だった。

2020/09/24

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