カーテンコール! (新潮文庫)
カーテンコール! (新潮文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『あなた方という、素晴らしい花たちと、学園最後の日を迎えられたことを、私は心より誇りに思います』と語る理事長の角田。そんな角田の前に『訳あり』とされてきた女子学生達の姿がありました。大学卒業ということ以上に、それぞれに何かを掴んだ彼女達。そんな彼女達が卒業前にカーテンコールの如く見せてくれた人生の一つの転機が描かれたこの作品。沈鬱な設定が、コミカルに描写されるキャラクターの存在で適度に中和されるこの作品。それは加納朋子さんという作家さんの優しさに溢れる感情の発露をそこに見ることのできる作品だと思いました。
2022/01/10
はっせー
『あなたは素晴らしい』これはヒマワリの花言葉である。閉校が決まった女子大で単位不足で卒業出来ない生徒を卒業させるための合宿に来た生徒と理事長の物語。その最後の卒業式で理事長が言った言葉が花言葉である。合宿にきた生徒はみなわけありである。そんな生徒たちに向けた言葉は本当に心にしみる。どんな人であっても素晴らしい。無条件に生徒を信じて生徒と向き合い、何かあったときに逃げることのできる力を育てた理事長が本当にカッコいい!こんな人に教えてもらいたかったと思える。人生にそっと明かりを灯してくれる作品であった!
2020/11/24
エドワード
経営不振で閉校する萌木女学園。ところが単位不足で卒業出来ない学生たちがいた。角田理事長は彼女たちに寮生活をさせ、半年かけて特別講義を行うが…。悩みを抱えて奮闘する9人の女子学生。性同一性障害、腐女子、拒食症、フーテン、眠い病、そしてリストカット。オビにもあるように、誰かに共感してしまう、みなごく普通の学生たちだ。コミカルに見せて闇も垣間見せる。柚木麻子さんの作品に通じる、学生たちへの優しい眼差し、学生たちの交流に救われる。卒業式で語られる理事長の姉の悲話に驚く。寮を去り難い彼女たちの気持ち、よーく解るね。
2020/09/14
おたま
初めて読む加納朋子の連作短編集。その年の3月に閉校することになっていた萌木女学園。ところが訳ありのために卒業できずに残ってしまった10数人の女子学生がいた。その学生たちは残っている学生寮に集められ、9月まで特別補講を受けることに。担当するのは理事長である角田を初め、その妻や娘、そして萌木女学園の教師だった老人教師有志と校医等。それぞれの学生が卒業できないのにはそれぞれの理由があり、過去がある。彼女たちは皆、なんらかの意味で「敗者」でもある。これはただ学業の補講ではなく、人生の「敗者復活戦」!
2022/04/01
やっちゃん
「それなら私はハゲですよ」の理事長がカッコいい。うまくタッグパートナーを組み合わせて相互補助の関係にするのはお見事です。良くも悪くも親の影響は大きい、親元を離れて環境を変えるのも大事ですね。最後の教訓はとても良かったです理事長。
2023/11/04
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