妻は忘れない (新潮文庫)
妻は忘れない (新潮文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
矢樹純さんの「夫の骨」に続く全5編を収録した2冊目の秀作短編集です。本書もどんでん返しが売りの作品集なのですが、前作に比べるとやや物足りなく感じるのですね。決して悪くはないのですが、どうしてなのかと理由を考えるとバッドエンドではなくハッピーエンドな作品の占める割合が高いからだと思われますね。私たちは巷に溢れるイヤミスに慣れ親しんでいるせいで、最早ありきたりの刺激では満足できなくなっているのでしょうね。でも健全な精神の持ち主の方には十分満足できる内容だろうと思いますし読者によって評価が大きく割れそうですね。
2022/03/16
しんたろー
矢樹さん2冊目は家族をテーマにした短編が5つ…イヤミスに分類される話だが、苦手な私でも楽しんで読めるのが著者の巧いところ…誰しもが抱えていそうな心の闇でサスペンスを盛り上げるだけでなく、納得できるオチで希望を持たせてくれるからだろう。『裂けた繭』だけはグロいホラータッチでスッキリしないが(これはこれで面白い)、他4作は伏線の回収&余韻あるラストに満足。単なるイヤミス作家と決めつけてはいけない筆力を感じるので、他作品も読んでみたい。それにしても、本人は覚えてない失敗や失言を「妻は忘れない」よなぁ(;^ω^)
2020/12/27
utinopoti27
家族の日常に潜む違和感をテーマにした短編集。表題作「妻は忘れない」は、夫の言動に不穏な空気を感じ出した妻の心理を、サスペンス風に味付けした作品だ。つかみは悪くないのだが、収束が肩透かし気味。むしろミステリとしては、息子を溺愛する母親を描く「戻り梅雨」の感触がいい。巧みな伏線に加え、ラストの意外性も効いている。ただ、収録作の中ではマシと思えるだけで、短編の生命線である起承転結のキレがどの作品も甘いので、全体として読後感がすっきりしない。前作『夫の骨』に比べると、見劣り感が際立つ出来になってしまったようだ。
2021/05/11
ちょろこ
クセになりそうな一冊。この作家さんはクセになりそうな中毒性を孕んでいると強く確信した五篇、どれも満足。次は?と早く読みたい心をめちゃくちゃ刺激された。描かれているのはごく普通の日常を営む人達。だからこそすぐ隣に身を置く感覚で眺められ、また生活感溢れる描写がすんなり心に溶け込んでくる、このリアル感が半端ない。随所でのセリフ、間合い、それらによって伝わってくる主人公の揺れる、掻き乱される心情。その心情に読み手もシンクロさせられる時間もたまらない。「無垢なる手」「戻り梅雨」の対照的な読後感が好き。次作も楽しみ。
2021/01/10
みっちゃん
前作『夫の骨』であれだけ驚愕させておいて、まだこんなにネタがあるのか。すごいな。一番は『百舌鳥の家』この姉さんが心底怖い。もはやホラーではないか。
2021/05/30
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