光抱く友よ (新潮文庫)
光抱く友よ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
1983年下半期芥川賞受賞作。小説に描かれている時期はいつ頃だろうか。筆者自身の体験がもとになっているとすれば、1960年代半ばの山口県防府市ということになろうか。今でこそ普通の共学になったようだが、かつて山口県内の公立高校は長らく男女別学(校内に男子棟と女子棟がある)だった。そこでの相馬涼子と松尾勝美との交友とすれ違いとを描くが、それは結局のところ交点を結ばない。涼子は、理解しようとしたはずのクラスメート(いわゆる不良であり、特異な環境にいる)を最後までファーストネームではなく、「松尾」と呼ぶのだから。
2014/03/07
遥かなる想い
第90回(昭和58年度下半期)芥川賞受賞。優等生の相馬涼子が奔放な不良の松尾勝美と出会い、成長していく様を清冽に描いたもの。展開になぜか緊張感があり、淡くも哀しい出会いと別れが心に残る・・そんな本であった。奥手の私にとって、不良少女の生き方ひどく 眩しかった,そんな時代だった。
zero1
90回(1983年下期)芥川賞受賞作。古典的な手法で女子高生を描く。涼子は引っ込み思案で英語教師に憧れる。ある日、その教師は不良と噂の勝美を罵倒。手紙の代書をきっかけに仲良くなった二人。しかし涼子の一言が関係を壊す。女性視点のパイオニア?言葉の選択と心理描写は見事。ネットや携帯端末がなくても人の本質は変わらない。夫不在の中、娘と暮らす「揺れる髪」、青い性を描いた「春まだ浅く」も収録。戦後生まれの女性としては初の受賞者。たまには選考委員の受賞作を読むのも意味がある。レビューが76件とはもったいない。
2019/07/03
hit4papa
よいところのお嬢様であり品行方正な相馬涼子と、やさぐれ感むんむんの松尾勝美、二人の女子高生のひとときを描いた作品です。不良少女とお近づきになった優等生が、人生の悲哀を垣間見るという、ありがちなプロットですが友情よ永遠なれ!とならないのがリアルですね。二人が近づき、分かり合えたかに思えた束の間を切り取っているのです。この年代の友情が美しさだけではなく、脆くてちょっと残酷であることを巧に著しています。複雑な感情の入り乱れる描写が良いですね。多感な時期を過ごした読者の共感を得ることができると思います。【芥川賞】
2019/05/18
はつばあば
昔が、青春時代が突然本のなかに現れてびっくりしている。「春まだ遠く」・・男と女の関係もドンピシャ。「結婚するまでは清いままで」が当たり前。男と女がどうのこうのなんて・・とんでもない話だった。「光抱く友よ」中学入学したの頃、松尾とよく似た生活環境の人もいたけど・・どうしたのだろう。京都はとくに大人も子供も差別意識が高かったから涼子のような父親は珍しい。3つの小学校から集まって一つの中学に。1クラス53名、12クラス。上級生は17クラスのマンモス校。ほろ苦い懐かしさに出会った
2016/07/30
感想・レビューをもっと見る