哀歌は流れる (新潮文庫 た 43-6)
哀歌は流れる (新潮文庫 た 43-6) / 感想・レビュー
あ げ こ
救い、救われ、一つ一つ癒えて行くそれぞれの哀しみ。出会いが与えるもの、或いは別離が残すもの。密やかに噛み締め、向き合い続けることで、哀しみは人知れず、緩やかにその形を変えて行く。暗がりを脱し、躊躇いや恐れを拭い切れぬまま、歩み始めたばかりの身。いま哀しみに在るものとの出会いは、ようやく通り抜けたそこの苦さを思わせ、時に重く煩わしい。暗がりに篭る熱の、その源に触れ…痛みさえ伴う濃密な接触、しかしそれは、他でもない自分自身を救いへと導くもの。柔らかに癒えた心、哀しみを照らす光は次のものへ。心地よく流れて行く。
2015/09/21
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