蘭の影 (新潮文庫 た 43-8)
蘭の影 (新潮文庫 た 43-8) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
女性の心の綾を描いていく純文学の短編集。波長の合わない作品もわずかにあったが、惹きつけられるものが多かった。「鈴懸の木」が一番好きだ。一時的に赤ん坊を育てることになった老夫婦の戸惑いと喜びが鮮やかに描かれている。くすんだ彼らの日常が、赤ん坊によって明るい方へ変化する。新しい命は、このように祝福されたものだろう。「玉子」も良かった。妹の死に立ち会った老いた女性が、自分の若い頃の恋を列車の中で思い出す。向かいの席に座った老人から渡された玉子がきっかけだった。戦時中の淡い恋が切なくて、読み手に深い余韻を残す。
2018/05/13
じいじ
7編の短編。ホラー的だったり、つまらないのが3作ほど混じっている。表題作「蘭の影」は、医者の夫から幸福病だ、贅沢病だと揶揄される49歳の妻。更年期を自覚しながら夫への嫉妬心を燃やす・・。男目線からは共感、納得できる話だが、女性視点からはどうか感想が聞きたい・・。「鈴懸の木」は面白い。九州の老夫婦が東京の妹からの頼みで、知人の赤ん坊を預かることに・・。その赤ん坊のことで、68歳の老女がおこすヤキモチが何ともかわいい。全体を通して、共感、感動は薄いのだが、何故か引き込まれてしまう不思議な力がある作品である。
2015/03/02
かおり
そんなに年齢の変わらない女性の話しもあるのに、全て「老婆」の話しに思える。自分もすぐに年寄りになるのに、どうしても嫌悪感。
2021/01/17
あーちゃん♪
表題作のみ読了。ファンタジーと現実の混沌とした世界。なるほどなー。デン子って、、、( ̄▽ ̄;)と思ったけど。時間があるときにまた他のも読みたい。短編だから読めそうな気がする。
2016/01/30
しゅんしゅん
女性の心の機微を描いた短編集。現実の中に急に幻想が入り乱れてくる展開が多い。心の隙間をいきなりぶっ刺されるようなホラー感覚もあってドキドキさせられる。表面的には知り得ない、肉体と精神が不均衡になりやすい年代の女性を描く手段としてファンタジーを用いるのは少し斬新だった。揺らぐ精神にともなって誘われるかのように、生理的な肉体感覚も付随して疼いたり思い出したように蘇ったり、まるで思春期の妄想が重ねてきた人生の分だけより重層的な旋律を奏でるかのように湧き出す感じがして、むせ返りそうな気持ちを覚えた。
2021/10/09
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