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地獄変・偸盗 (新潮文庫)

地獄変・偸盗 (新潮文庫)

地獄変・偸盗 (新潮文庫)

作家
芥川龍之介
出版社
新潮社
発売日
1968-11-19
ISBN
9784101025025
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地獄変・偸盗 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェルナーの日記

ページ数的にいえば、一気に読んでしまえる量だが、それではもったない。じっくりと読んで味わいたい傑作集である。芥川龍之介の作風は、作品の独創性とか、物語性が優れているのではなく、文章の筆致、その修辞性が特筆している。特にレトリックの使い方が上手く、換喩や提喩、隠喩と直喩などの使い方が卓越し、まるで映像のワン・シーンを切り取ったかのような筆の彩をもつ。本作では『地獄変』が、秀逸であり、その描写力は、背筋に鳥肌が立つほどの出来栄えを感じた。芥川作品群の中でも、群を抜いているのではないだろうか。

2015/04/21

ehirano1

地獄変について。これは凄い、圧倒されました。「善と悪」、「プロフェッショナルと狂気」、「経験主義と空想主義」、「至上主義と理想主義」の境界を描いた作品ではないかと思いました。

2023/05/04

zero1

読者は基本的に書かれていることを信じて作品を読む。もしそれが信じられなかったら?ミステリーで用いられる手法、「信頼できない語り手」の「地獄変」。「アクロイド殺し」(クリスティー)や「日の名残り」(イシグロ)でもこの手法は用いられている。語り手を全面的に信用している読者は少ないはず。解釈は無限大。私は堀川の殿が身勝手で残酷だと考える。見た物しか描けないとしたら、その表現者は三流。先駆者は時代に耐える作品を遺す。「藪の中」も証言が三者で分かれる。誰の言うことが本当なのか?死者に話を訊くというのは再読でも斬新。

2018/12/20

かみぶくろ

なかなかにダークな世界観を醸し出す、芥川龍之介「王朝物」作品集第二弾。例によって粒ぞろいだが、とりわけ「地獄変」と「藪の中」が傑作だと思う。全編通じて、一行でまとめられそうなテーマがそれぞれ明確に示されており(例えば地獄変は「芸術・美と道徳の相剋」とか)、ある意味分かりやすいそれは芥川の明晰さの証左とも言えそう。個人的には、彼が描く人間像の方に強く惹かれる。ほとんどの人物が俗悪で利己的で人間臭い。そうした人間達の中にちらりと垣間見える美しい瞬間が素敵だ。

2015/11/03

修一朗

映画の羅生門の原作が「藪の中」だってこと,映画を見て知りました…。北村薫さんの「六の宮の姫君」を読んだ後でこっちへ。「往生絵巻」のラストシーンにも表現をめぐって紆余曲折があったことを北村版六の宮の姫君で知った。なるほど背景を知った上での再読,でもひたすら流されていく受け身のお姫様「六の宮の姫君」には憐憫しかわかない。芸術至上主義のエゴイズムを表現した「地獄変」が自分としては一番だ。未熟な高校生が昔に読んだ印象は「平安時代っていやな時代だったんだな」っていう平板な読感だった。歳を経た今の方がわかる気がする…

2017/12/14

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