色ざんげ (新潮文庫 う 1-1)
色ざんげ (新潮文庫 う 1-1) / 感想・レビュー
kaoriction@感想は気まぐれに
久しぶりに「濃い」恋愛小説を読んだ。疲れた。重い。なんだ、この虚脱感は。東郷青児をモデルに彼の心中未遂事件と、三人の女性との恋愛を描いた、恋愛小説の古典とも言われる名作。携帯もネットもない時代、真っ向からぶつかり合い、破滅してゆく男と女。高尾の奔放さ、つゆ子の一途さと脆さ怖さ、とも子のしたたかさ。三人三様の女達に翻弄され、破滅、凋落してゆく湯浅の心が緻密に描かれていて面白い。女の業も、深く、強く、オソロシイ。オソロシイのに、怖いもの見たさで読んでしまう。湯浅の行く手に未来はあるのか、「生」はあるのか、と。
2012/09/25
sofia
東郷青児の絵を見ながら、前回読んだ『心淋しき巨人東郷青児』を思い出しながら、この本を読むと非常におもしろかった。
2013/10/04
Minno
予備知識全くなしで一気に読了!宇野千代さんの作品も初めてでした。 最初は、なんだかメロドラマちっくな通俗的な展開かも…って思ったんだけど、とも子の両親が出てきたあたりから宇野千代さんの人間観がもっと深いものなんだって気づかされて、最後もとも子のお母さんで終わってるあたりに作者の深い意図を受け取りました。 読み終わってから東郷青児の話なんだって知って、それから宇野千代さん自身もその愛人だったことも知って、なんて、なんて宇野千代さんてカッコイイんだろう!っていうまた新たなる感動。
2015/09/01
うちこ
「おはん」があまりにもおもしろかったので、この「色ざんげ」も読んでみました。 この小説が出た当時(昭和10年)は、実在の男女の事件が題材になっていたため暴露本のような側面もあって売れたそうですが、そのいきさつを知らずに読んでも引き込まれる文章です。今となっては異常にも見える恋愛スタイルが改行なくスピード感とともに進み、そのやや狂った心境を強烈に手に取るように感じさせるフレーズが、すっと差し挟まれる。男性が読んでも「おまえは俺か」と思いそうなこの感じは「永い言い訳」の西川美和さんの書く男性心理の描写のよう。
2018/09/23
スエ
「恋は凡ての罪悪を孕む」とは夏目漱石の言葉だが、まさにそんな感じの物語。振り回されるほうはたまったもんじゃないが、その中でこそ得られるものもあるから芸術家というのは罪深い(著者も含めて)。
2015/12/12
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