悪徳もまた (新潮文庫 草 27-3)
悪徳もまた (新潮文庫 草 27-3) / 感想・レビュー
kaoriction@感想は気まぐれに
四編の私小説。エッセイのようであり、そこはかとなく限りなく小説であり。「これだけはぜひ話しておきたいと思うことは、ちょっと隠しておく方が効果的です」「いかにものんびり書いているように見せるのがコツです」「こんな風に自慢らしく列べ立てましたが、果たして目的を達しているでしょうか」。存分に。北原武夫から離婚届を突き付けられ「ええ、好いわ」と答える。去ってゆく北原との別離にもあっさりとした場面。そこに「ちょっと隠し」た心情が見えた気がした。語らぬが故の北原への愛情。東郷への愛情。お千代さんの愛情、言葉は、深い。
2013/07/29
うちこ
本家からの仕送りで生きるニートのDV父さんとその三人目の妻で自分と年齢が6歳か7歳しか違わない姉のような継母、 その子供たちと一緒に長女として暮らす様子が書かれている「悪徳もまた」の心理描写は驚くほど緻密。 共依存のメカニズムを自覚しながら演じることが常態化したような、この独特の双方視点が「おはん」を生み出したのかと思うとその自我の殺し方にぞっとする。血縁があろうがなかろうが、恨まず憎まないための工夫はマネタイズにありとでもいうような語りっぷりは西原理恵子さんとも似ていて、頼もしいを越えておそろしい。
2018/10/30
ライム
過去の数々の苦難を、建てた家の自慢と同列に楽しく語れる著者の心境には憧れます。波瀾万丈の荒波に、進んでダイブするかの様な行動の数々…思考から離れ突進する気質と、苦痛も認識しなければケロリとして居られる習性とが有るから出来る…まるっきり単細胞のようだが、作家とデザインを両立する知性とのギャップが有る所に、著者の生き方の秘密があるのだろう。こんな行動力のある女性が庖丁持って来たなら、私なら絶対に逆らおうとは思わない。
2024/09/22
Maumim
1999年8月31日読了。
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