ぎょらん (新潮文庫 ま 60-22)
ぎょらん (新潮文庫 ま 60-22) / 感想・レビュー
bunmei
人々の心に温かな燈を灯すような町田作品。本作も『死』という人が生まれ持つ悲しい運命(さだめ)をテーマとし、その死に立ち合った人々の悲哀を描きながらも、その死が持つ意味を見出していく物語。遺されて傷ついた者達の心を癒し、新たな道へと歩み出そうとするような、心温まる7つの作品が収録されている。また、各々の作品の舞台や登場人物に少しずつ関りを持たせ、死者の傍らに現れ、最後の願いがわかるという『ぎょらん』の発見によって物語を繋ぐ事で、感動的な長編の様な感覚で読み進めた。どれも、涙腺が緩みっぱなしの作品ばかりだ。
2023/09/08
のり
死者が残すと言われる赤い玉。それは「ぎょらん」と呼ばれる物。それを食すれば死者の最後の思いがわかるという。それは決して残された者が喜ばしく感じる事だけではない。逆にその思いに囚われてしまう事が多々ある。「朱鷺」もそんな一人だ。あまりにも重すぎる事態に苦しみ続ける事になる。そんな過程で他者の出来事にも遭遇して「ぎょらん」の根本を探る新たな道を進む。圧倒的な思いと折り合いをつけ、再生を祈る。
2023/11/30
Kazuko Ohta
先月から危篤状態が続いていた母。今朝病院から「意識が低下して呼吸が浅くなっている」と連絡があり、駆けつけました。それからおよそ1時間半、眠るように母逝く。母の手を握りながらいろんな話をして、あと50頁ほどだった本作を開き、「お母さん、これな、人が死ぬときに遺す珠の話やねん」とぽつぽつ声に出して読みながら過ごしていたら、ちょうど全部読み終わりそうになったときに、母の心拍数がゼロに近づきました。「お母さん、ありがとう」と言ったら、スーッと涙ひと筋。聞こえていたならいいなぁ。明後日のお葬式ではぎょらんを探すよ。
2024/04/11
エドワード
人が死ぬ時に残す赤い珠「ぎょらん」。それを口にすれば、死者の最期の言葉を聞くことが出来る。ニートで漫画おたくの御舟朱鷺を軸に、彼の家族、彼が働き始めた葬儀社の人々等が見聞する、死者の本当の想い。朱鷺の妹・華子の恋人。ジャングルジムに首がひっかかった子供。老人施設の身寄りのない女性―彼女の過去が明らかになる過程が印象的だ。朱鷺の中学時代の友人、そして朱鷺と華子の母。これは、人間と人間の本当の関係を紐解いていく小説だ。死者の真実の心を知るのは怖い。ぎょらんなんか本当は無いことに安堵している私がいる。
2023/07/27
ヨノスケ
町田そのこさんの短編集。一話一話が独立してるようで絶妙なつながりを持っている。このような作品構成、本当に上手いなと思ってしまう。あれ?この人物は前章に登場した人だ、を繰り返しつつ話が進む感動作。その中でも「糸を渡す」という作品は個人的に絶品でした。
2023/07/31
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