ルポ川崎 (新潮文庫)
ルポ川崎 (新潮文庫) / 感想・レビュー
佐島楓
マスコミはあまりにもこの界隈を「ないもの」として扱ってきたように思う。貧困や犯罪、ヘイトデモなどが細々と報じられるようになったのはごく最近だが、かなり以前から存在した「現実」なのだということを、あまりにも見ないようにしてきた。だからといって何ができるのかは、アンダーグラウンドすぎて私にもよくわからない。ただ取材した方々がおっしゃるところの「地獄」は思っていたよりも「普通」に暮らしている人たちの暮らしと紙一重なのかもしれない。
2021/05/22
H!deking
川崎の歴史を知るには面白い内容ではありましたが、インタビューされるアーティストの人たちがアルファベット表記が多くてとにかく読みにくいのと、同じ話がループしてる部分もあるので、偏ってるように感じましたね。フォークシンガーの話とかあっち方向もう少し掘り下げて欲しかった。
2024/06/06
ナミのママ
中一殺人事件、簡易宿泊所の火災、老人ホーム転落死事件が続いた当時の川崎。事件そのものより背景の暗さがとりただされた街。…10代を川崎で暮らしたが、ここにとりあげられる南部ではなく北部だった。当時、南部には行くな、南武線は利用するな、と言われていた。別世界のような人を多く見かけ、それは大人だけでなく、同年代の10代もだった。この作品を読み、変わってないんじゃないか?というのが素直な感想だ。それは見ないふりをしてきたからか、世代間連鎖なのか。ルポは面白かったが、今の自分には実感がわかない。
2021/05/22
hatayan
2015年に中学生殺害事件の起きた川崎市の臨海工業地帯でひしめき合うように生きる人々をルポ。川崎在住をアイデンティティにラップで身を起こす元不良少年、多文化が共存する社会でヘイトスピーチに立ち向かう在日コリアン、競輪場に通いながらドヤ街で暮らす高齢者など。著者が音楽ライターのためラップやヒップホップに紙幅。東南アジアから出稼ぎで来た女性が日本で苛酷な環境に晒される実態をルポした『じゃぱゆきさん(山谷哲夫著)』の子どもたちのその後を描いているようにも思えました。都市のリアルを生々しく切り取った一冊です。
2021/05/05
雲をみるひと
主にBAD HOPのメンバーの生い立ちや育った環境などがテーマ。当該テーマなので、取り上げられているのがあくまで川崎の一面だとしても題名にさほど違和感はない。しかしながら、この題名にしたことで川崎で発生した事件や川崎出身の他のアーティストも取り上げて、関連付ける方向性の作品になってしまったとしたら少し残念。正直強引な論法に思える箇所も多々ある。
2023/02/26
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