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蟻の棲み家 (新潮文庫)

蟻の棲み家 (新潮文庫)

蟻の棲み家 (新潮文庫)

作家
望月諒子
出版社
新潮社
発売日
2021-10-28
ISBN
9784101033419
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蟻の棲み家 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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イアン

★★★★☆☆☆☆☆☆格差社会を扱った木部美智子シリーズ第5弾。都内で発見された2人の女性の銃殺体。事件記者の美智子はその裏に別件で執筆中の企業恐喝事件との関連を見出すが…。図らずも「蟻」がタイトルに含まれる柚月裕子の『蟻の菜園』と立て続けに読んだが、女性記者が主人公だったり児童虐待を扱っていたりと共通点が多くて驚いた。全体に漂う暗い雰囲気や事件のプロットは好みだったものの、文体のリズムが合わないのかスッと頭に入ってこない場面もあった。足掻いても抜け出せない末男の不幸な境遇はさながら蟻地獄のようだと感じた。

2022/01/25

JKD

陳腐な企業恐喝と二人の女性射殺事件は多くの歪んだ人物によって複雑に絡み合っていた。そこに劣悪な環境で育ち命がけで生きてきた吉沢末男という男が出てくる。事件捜査は混乱し、犯罪構造がまるで立証できない中、唯一特異な嗅覚で証拠を掴んでいく凄腕ライター木部美智子の感度に興味が集中する。後半、美智子は末男と対峙し社会的弱者たちの闇と事件の真相を畳み掛けるように暴いていくシーンは圧巻。「どんなに頑張ってもクズからは抜け出せない」という台詞も印象的。安全な日本の裏側で蠢く格差社会をテーマにした重苦しい話でした。

2021/11/21

ふじさん

吉沢末男の人物の生い立ちが語られるプロローグは圧巻で、著者の恐るべき筆力に圧倒される。フリーの事件記者の木部美智子は、最近起きた若い女性連続殺人事件とかねてから追いかけていた企業恐喝事件の間に意外な繋がりがあることに気づく。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなるような社会の暗部が徐々に明らかなる。事件の真相が明らかになる共に、末男の心の奥底にある思いも次第に明らかになり、事件は最後に真実へと辿り着く。読んでいて何度か途中でやめようかという思いになったが、最後の周到な仕掛けにそんな思いも吹き飛んだ。

2022/10/24

しんたろー

望月諒子さん初読み。殺人事件が3件絡んだ社会派ミステリで、格差社会&子育てをテーマしているからか、澱んだような空気感で重く進行する。読み易い文章ではないし、展開もスローなので本来なら辛くなるタイプだが、目を逸らせないような不思議な吸引力があった。現代日本を巧く切り取り、熱を込めてはいるが冷静に描かれているからだろう。フリーライター木部美智子シリーズとして5作目らしいが、彼女が主人公である魅力は特に感じなかった。帯の「ミステリ史に残る大どんでん返し」に誘われて手に取ったが、これは誇大広告と言わざるを得ない。

2023/06/28

ナルピーチ

貧困問題、格差社会、そんなワードを全面に押し出した社会派小説。この物語に爽快さは微塵も感じない。虚しさと絶望感と力強さが後に残るのみ。そんな重たい雰囲気からか、目を背けたくなる様な感覚に囚われるも最後まで苦にならずに読めてしまう重厚感が良かった。ここからは小言。この小説、帯でだいぶ損している。〝ミステリー史上に燦然と輝く大どんでん返し!〟との煽りから期待してしまうが…。残念ながらこの小説に求める事とは違う気が…。ノワール小説としての良さを売りにした帯に即刻変えるべき!読後の印象も大きく変わると思いますよ。

2024/06/09

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