同潤会代官山アパートメント (新潮文庫)
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同潤会代官山アパートメント (新潮文庫) / 感想・レビュー
ふじさん
同潤会代官山アパートメントを舞台に、親子四代にわたる大河小説。関東大震災で妹を亡くした八重と妹の婚約者竹井の結婚から始まり、太平洋戦争、バブル景気、阪神淡路大震災等、時代の荒波に翻弄されながらも、心通わす人々と出会い家族をつくり、支え合って生きた四世代の姿を淡々とした静かな語りで綴るあたたかな気持ちを味わえる家族小説。朝ドラを見終わったような読後感の作品だ。「ビブリア古書堂の事件手帖」以来の三上延の作品だが、違った意味で面白かった。
2023/01/08
りゅう☆
関東大震災で妹を亡くした八重は、数年後妹の婚約者だった竹井と結婚して同潤会アパートに入居。物静かな夫婦に娘恵子が生まれる。第二次世界大戦後、恵子が幼馴染と結婚して息子2人をもうけ八重は母から祖母へ。孫長男が結婚、曾孫の千夏が生まれ、竹井に癌が見つかり、1人暮らしの元に孫進と千夏がいて阪神淡路大震災が起こり。最初はモダンだったアパートも老朽化。年月を共に過ごしてきた八重も…。10年おきの4世代、70年の物語。別れは必ずあるけれど、愛する人と出会って一緒に生きていることが幸せ。そんな温かくて優しい家族の物語。
2022/05/10
ちょこまーぶる
読後は心が温かくなって、読書時間はゆっくりと時が流れていたような気分にさせてくれた一冊でした。同潤会代官山アパートの新築と同時に住み始めた家族四世代の話ですが、様々な家族内問題や時代の出来事に翻弄されながらも家族の信頼し合う姿が、僕の心を強く光を照らしてくれた思いがしました。家族って色々な関係性があると思いますが、少しでも気にかけたり、信頼する事が必要なんでしょうね。そして、若い時、原宿の同潤会アパートの中のショップで、その当時の自分には高価な青いマフラーを買って、20年以上巻いていた事を思い出しました。
2023/06/08
真理そら
1927年から1997年まで同潤会代官山アパートで暮らした一家4代の家族の物語。関東大震災、第二次世界大戦、阪神淡路大震災のような悲惨な歴史も辿りながら社会と隔絶されたかのような淡々とした家族の営みを描いているので、逆に読者側はあれこれ考えてしまう。妹の婚約者と結婚することになった八重が大往生を遂げ、代官山アパートの建替えまでを夫や子、孫、曾孫の視点で10年刻みで描いている。
2022/01/29
佐島楓
人の一生とは、いったい何なのだろう。昭和初期に物語が始まり、その70年後、バブル崩壊後に閉じるこの物語を読んで、そう感じずにはいられなかった。登場人物に大きな傷を残すのが、関東大震災と阪神大震災というところも、人間の力ではどうにもならない部分がとても大きいことを示しているようで、胸が苦しくなる。誰しも歳を取り、落命するということが、こんなに切ないとは。
2022/02/11
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