八本目の槍 (新潮文庫)
八本目の槍 (新潮文庫) / 感想・レビュー
W-G
構成としては、連作短編形式となっており、他の本と並行で読むのに最適。神算鬼謀という言葉がぴったりの石田三成像に好感は持てる。その為ではあるが、都合の悪い史実はカットされたり、かなりマイルドに触れられ、詳しい人が読むと違和感が残るかも。ただ、三成が関ヶ原に臨んだ理由づけが、滅茶苦茶に独創的でユニーク。この着想はすごいと思った。章ごとに見ると、助右衛門と権平の話が個人的ベスト。私が歳をとったということもあるが、挫折を経た生き様に強く共感してしまう。佐吉が権平に「笑うな」と語気を荒げる場面がすごく好き。
2022/06/22
パトラッシュ
賤ケ岳の七本槍といえば豊臣家中でも武闘派の代表格とされてきた。しかし武勲を立てればよかった若き日々は去り、それぞれが組織人として薄汚れた大人の世界に足を踏み入れると、気の合わない官僚派の代表格だった石田三成が未来を冷静に見つめる理想主義者だったことがわかってくる。とりわけ対立していたはずの福島正則が、三成が命懸けで守ろうとした豊臣家が淀君と大野治長に乗っ取られ変質していたと悟り愕然とする結末は苦く哀しい。関が原と元和偃武へ向かう結末がわかっている物語ながら、従来にない視点で読ませてしまう練達の筆が見事だ。
2022/06/13
ナルピーチ
賤ヶ岳の戦で一番武功の活躍を見せ、世に“賤ヶ岳七本槍”と呼ばれる様になった七人と“小姓組”として共に過ごした石田三成(佐吉)との熱き友情を描く。それぞれが語る三成は今までイメージしてきたものとは一味違う人物像に感じた。不器用で素っ気ないけど最も人情深く、誰よりも仲間思いが強い。同じ釜の飯を食い、青き日々を共に過ごした八人。関ヶ原の戦いでは各々の事情により袂を分かつ事になってしまったが、もしもこの七人が賤ヶ岳の時と同様に関ヶ原の戦いで西軍側に付いていたのなら、今とは代わった時代が来ていたのかもしれない。
2023/02/28
岡本
Kindle。三成と七本槍の印象が変わる一冊。それぞれの章で秀吉小姓時代から晩年が描かれており、七本槍それぞれから三成の策を知る楽しさがある。どの人物も魅力ある人物として描かれており、著者の他作品も読んでみたくなった。
2023/09/20
のり
石田三成スゲェ〜。今村翔吾スゲェ〜。賤ヶ岳の戦いで目覚ましい活躍をした「秀吉」の小姓7人。その武功により賤ヶ岳の七本槍と呼ばれるようになったが、「佐吉(三成)」は入らなかったが、彼等との「」出会いから一生を終えるまでには紆余曲折があった。政事に関しては佐吉を超える者は誰一人といない。先々の事まで視野に入れての戦略も舌を巻く。余計な口数を叩かない分、誤解をされる事も多々。同じ釜の飯を食べていたからこその信頼と反発。豊臣家を想う忠義に頭が下がるし、七本槍への想いに打たれた。
2022/09/20
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