花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)
花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
文庫のための自選短篇集で、解説も作家本人が書いている。13篇を収録するが、集中、小説としてのうまさに感服するのは『女方』だ。万菊、増山、川崎、いずれの人物造形も実に見事。特に歌舞伎の世界で生きてきた万菊の芸と恋の表現は、まさしく小説を読む醍醐味に溢れている。そして三島は彼(彼女)を見つめ続ける増山の感じる「幻滅」と「嫉妬」という二律背反する感情の複雑さを、そこに描き出してゆく。また『憂国』は、三島自身の永遠の憧憬なのだろう。まさしくエロスとタナトスとが同時に共存し得る稀有な時間がそこに濃密に現出する。
2012/07/13
馨
表題作の憂国、良かったです!! ほかにも三島由紀夫の短編集がこれでもかと詰め込まれていてとても贅沢な1冊だと思いました☆
2013/03/09
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
みえない井戸の底をみようと目を凝らした、そこにちらついているのは光だった。躑躅の森に花水木、強い香は茉莉花、春のひざしに似合う花ざかりの森を木かげにひそんで挑みたい。暗やみに匂いたつ花々を想像して。信じても裏切られるこの世を、それでも美しいと感じるこころが好きなのです。美しいまま死にたいとのぞんでも、わたしは自刃するやいばがこわいのです。この世のすべてが今、と咲きほこる花のような霞のように消えるような。あなたを愛す私を愛す、夢に酔うこの世は一瞬で一瞬は永遠、と口のなかでつぶやいてきえた。弄ぶ、春だった。
2020/04/26
遥かなる想い
短編集。16歳ぐらいの少年の描写はうまい。 不気味な冷静を感じるのは、三島の生涯を知ってからだろう。
2010/06/12
中玉ケビン砂糖
、「1に評論2に戯曲、3に小説」というイメージのある日本文学のシンボルみたいな男、ミシマ、命日の「憂国忌」には右翼が元気になりそうだがそれも所詮三島流のアイロニーであって、内心では「そんなことどうでもいいわ」とあの世で嗤っているかもしれない、本書は三島自身が気に入っている自作短篇を選んだもので、「卵」はとても面白かった、卵になんか恨みでもあるのかな? ヒッチコックは自分の卵嫌いを作品でモロに演出していたが……、、、
2015/04/07
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