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獣の戯れ (新潮文庫)

獣の戯れ (新潮文庫)

獣の戯れ (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
1966-07-12
ISBN
9784101050126
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獣の戯れ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

さまざまな意味合いにおいて、何かとわかりにくい作品だ。作中にも、その言葉は現れるものの、我々読者が表題から想像するものと、作品内容との間にはけっして小さくはない階梯がある。また、優子像もいわば曖昧さを残したままで物語は進行してゆく。そして結末部で結像する優子は、もはやほとんど別人であるかのようだ。一方の幸二の方は、はるかに諒解し易いが、それにしても行為と思惟との間には、やはり乖離があるだろう。結局、この作品全体を通して確かなものといえば、3つ並んだ墓石だけなのだ。物語の構成もまた、それを証左している。

2012/08/13

takaichiro

久しぶりの三島作品。文体は極めて美しい。比較的読みやすい。仲のよい男女3人組の日常生活はある日を境に一変。主人公の男がもう一人の男をスパナで殴打。半身不随、脳挫傷に追い込んでしまう。女性は一人では日常生活を送れない男の妻となるが、主人公に心惹かれている。生活の不自由な男から「死にたい」との言葉を聞いて、主人公は絞殺してしまう。男も女も逮捕され刑務所に入るが、二人の望みは三人の墓を横に並べることだった。深く愛した人間を自分の手によって死をもたらす心情。年老いた女の「ホッとした」の一言は深く心に刺さり込んだ。

2019/09/03

優希

美しい狂気が感じられました。複雑な愛憎の濃厚な色彩と心理描写が見事としか言えません。3人の男女の愛の共同体がエロスとして物語全体を包み込んでいます。未知なる糸に操られるように破滅へとはまり込んでいく流れに惹かれずにはられません。失われた愛を求めるために操られる世界が妖しい輝きを放っているように思えます。

2018/01/14

じいじ

残念ながら、道半ばにて途中撤退します。三島作品では初めてのことです。夫婦・愛人の三角関係が、三島の美文で綴られているのだが、残り半分を読み切る気力がありません。ドロドロした恋愛小説は、決して嫌いではありませんが、これは馴染めませんでした。

2021/04/10

パトラッシュ

読後、乱歩の『芋虫』を連想した。半身不随の夫を虐げて喜ぶ須永時子と献身的に介護する草門優子は正反対だが、幸二の拾ったスパナを置いたのは優子ではなかったか。わざと夫の前で愚かな行動をとり暴力を振るわせ、自分に好意を抱く幸二がスパナで殴りつけると計算していたのか。結果、優子は罪を問われず夫を完全に支配して、愛してくれた青年を刑務所送りにした。須永時子より強烈な嗜虐心の発露にとれるが、実は優子は夫と幸二を共に愛しており、三人だけの世界を築こうと図ったか。そう悟った夫が世界を完成させるため死を望んだのだとしたら。

2020/12/12

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