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午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
1968-07-15
ISBN
9784101050157
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午後の曳航 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

再読。この小説のあちこちに、フランス文学の面影が垣間見える。冒頭の隙間から隣室を覗き見るシーンには、サロートやロブ・グリエらのヌーボー・ロマンの手法が、そして少年たちの一団からはコクトーの『恐るべき子供たち』が直ちに連想されるし、よくいわれるラディゲの影もあるかも知れない。さて、物語は横浜を舞台に展開する。そこで語られるのは、陸に上がった船乗りの陳腐さ、父親であることの陳腐さ、母親であることの陳腐さであり、それに気がつかない愚劣さである。三島はそれをいとも軽やかに、そして時には官能的に語っていくのだ。

2012/09/02

読みやすくてあっという間に読了。こんな内容だったなんて衝撃でした。色んなところに張られたふせん、三島由紀夫は本当にうまいなぁと思います。猫のシーンは目を背けたくなりましたが三島由紀夫にかかると残酷な表現までもなぜだか美しいように感じます。首領が現代で言うところのサイコパス的な恐ろしさがあり恐い。賢いがゆえに自分のなかにあそこまでの思想を持つと止められないなぁと思います。

2018/04/03

遥かなる想い

ここでも、竜二というたくましい肉体の船乗りを登場させている。相手が 自分の母であり、そこから芽生える敵意…少年の透徹したような目がよい。

2010/06/12

mura_ユル活動

詩的な文体。最後、船がタグボートに曳かれていくように、塚崎竜二が子供たちに曳かれていく。船乗りの彼が未亡人の房子と夜を共に。房子の息子登の感情。小説全体の重く抑圧された感情表現、『厚い胸にひそむ死への憧れ』。『ふだんちっとも子供を構ってやれなかった良心の苛責を、結局子供から理解してもらいたがっている』。子供に『成長』を迫る親。子猫の解体シーンあり。ページ数多くないけれど深く拝読。金閣寺よりも入り込めた。

2016/12/03

新地学@児童書病発動中

三島らしさのよく出た小説。母親が船乗りの男性と結婚を決意することによって、主人公の登は、冒険への憧れが汚されたと感じ、大人の世界に幻滅を感じる。登の目から見た海や船、港の描写が美しくて詩的な輝きを帯びており、読んでいて華麗な文体に酔うことができた。反対に大人の世界は、散文的な日常がシニカルに描かれており、探偵が出てくるところでは吹き出してしまった。テレビのメロドラマになりそうなプロットが奥行きのある文学作品になっているのは、三島の圧倒的な筆力と人物描写の確かさのせいだろう。

2014/12/07

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