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真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
1970-07-17
ISBN
9784101050188
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真夏の死―自選短編集 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

著者の自選になる第1短編集『花ざかりの森』は、そこに収められた作品群が、いずれも情念的あるいは感覚的であり、小説を読む快楽を味わえた。一方こちらの第2短篇集は、多分に観念的であり、小説を読む楽しみにしても知的な側面を多く持つことになる。巻末にある著者の自註でも、それぞれの作品に対する固有の方法意識が語られており、いずれもその限りでは実験的なものであったようだ。アフォリズム風のうまさは随所に感じられるが、小説世界への投入感はいくぶん弱くならざるを得ない。篇中ではやはり表題作「真夏の死」が白眉か。

2012/11/28

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

悲しみは時とともに癒えるというのは嘘かもしれない。 終わりゆく夏と対比して波の音は絶え間なく。さかしらに不幸を見せびらかすおんなは嫌いです。かなしみは私だけのもの、だれにも分け与えるつもりはありませんと凛とした目の貴女。みんなが私を責めればいい、くるしみの夏は永遠に終わらなければいい。嘆く彼女を救ってあげたいなど私はいったい何様なのでしょう。白い肌に触れて薔薇を飾る。溢れる花弁はあかくて思い出の貴女は血塗れでした。うつくしい物語は茫洋としてイメージで遺る私のなかの、記憶。

2020/08/31

takaichiro

三島先生、自選短編第2集。解説も本人。切腹自死する昭和45年6月に記載。遺書のニュアンスも感じます。「自作・自註は退屈な作業だが第3者の手にかかってとんでもない憶測をされるより、古い自作を自分の手で面倒をみてやりたい」と。テーマからどれも長編として読みたいものばかり。但し、技巧的挑戦を始め作品の意図が解説されており、三島作品を知る貴重な資料の位置付けも。11作品の全てにわたり官能・哲学・芸術・生き様等の要素を複雑に織り込む仕上がり。短編でより凝縮度が高く、インテリ思考の三島loverには堪らない一品では?

2020/02/01

優希

自選短編集なので、三島の持つ様々な短編を読むことができました。虚しさ、同性愛、風俗といった多彩な表情を見せる11編の中には、文壇デビュー作とも言うべき作品まであるのが興味深いところです。短編小説の方法論と技術的実験の究極の結晶といった感じでしょうか。三島自身の解説も面白かったです。

2017/07/25

青蓮

再読。どの作品も切れ味抜群で印象的。短編集はその作家の均一なトーンがあるけれど、本書は色彩豊かで、三島由紀夫はこんな作品も書けるのかと改めて彼の天才的な才能を感じました。素晴らしい。メルヘンチックな雰囲気のある「翼」、モダンな男女の駆け引きを描いた「クロスワード・パズル」、その時代の若者達を取り巻く風俗を映した「葡萄パン」、オチに思わず笑ってしまう「雨のなかの噴水」などが新鮮に感じてお気に入りです。表題作の「真夏の死」はとても密度が高い作品で、まるで長編小説を読んでいるよう。巻末の自身による解説も面白い。

2016/07/20

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