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豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
2002-10-01
ISBN
9784101050218
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豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

再読。『豊饒の海』の第1巻。この連作長編では、「輪廻転生」を一貫したテーマとしているのだが、この『春の雪』は、そうしたことを離れて、むしろ独立した小説として読みたい。そして、これはまた何という優雅な恋愛の物語だろう。儚く美しく、まさしく美と愛の崩落性がこれほど見事に描き出された例がこれまでにあっただろうか。比喩の美しさもまた比類がない。例えばこんな風に…「彼はとうとう手を膝掛けの下へ入れた。そこでは、温かい巣の中で待っていた狡さをこめて、聡子の手が待っていた。」月修寺(圓照寺)を用いた構想もまた実に見事。

2012/06/17

遥かなる想い

Z会の通信添削をやっていたころ、現代国語の問題に出された。その書評で「久しぶりに小説らしい小説を読んだ余韻に浸ることができた」と書かれていたので、早速文庫を購入して読んだ。三島由紀夫が描く大正初期の絢爛優雅な世界に圧倒された。松枝清顕と綾倉聡子の悲恋が哀しい。私の中では三島作品第一位である。

みも

当時、とある同級生との会話をよく憶えている。僕は、4冊を読み終えていたが、その友人(ちなみに女性でした)は本書だけを読み、僕に感想を述べました。「2人の行動がじれったくて…」そうです…完全に恋愛小説のノリでした。僕は「そうだね…」と曖昧な相槌を打ちつつ…「ここで読むべきはそこじゃないんだよ~」と、心でつぶやいていました。そう…ご存知の方は勿論賛同していただけると思いますが、本作は4部作としてこそ完成品であり、輪廻転生をテーマに据えた全体像の、プロローグでしかないのです。清顕、聡子、本多。彼らの青春の1頁。

1986/01/01

ナマアタタカイカタタタキキ

豪華絢爛。季節の移ろいや自然の色彩が私には全て受け止めきれないほど麗しく、その華美に華美を重ねた重苦しい文体にただ圧倒されるばかり。しかし、冒頭で示されたあの写真のために、常に死の気配を傍らに感じつつ読み進め、ただ悲恋の推移を見守った。夢想と現実を行き来する清顕の痛々しいまでに若き魂と、“感情の戦場”の中での息遣い。その矜りが傷つけられる毎に、いたたまれなくて直視できなくなったりもしたけれど、その度に拗らせ坊っちゃんの生命がより一層燃え盛るのを目の当たりにした。んー、すぐに次巻に取り掛かる気にはなれない…

2020/10/06

れみ

時は大正初期。明治維新で功を成した松枝侯爵家の嫡男・清顕と、平安時代から帝に仕える朝倉伯爵家の令嬢・聡子の、ままならぬ恋の物語。清顕の生まれ持った性質なのか年齢ゆえか自分をどんどん苦しいところに追い込んでからでなければ喜びを得られないみたいな…本当厄介。とはいえ、両親から聡子と宮家との縁談についてあんな風に聞かれたとき、この年頃のこういう性格の人が素直な気持ちを言葉にするかっていうと、難しいかも。そして、三島文学に触れると語彙の豊富さや美しさにいつも満たされるけど、この作品は特にそう感じる。→

2018/05/04

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