女神 (新潮文庫)
女神 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作の中篇「女神」をはじめ、主として三島の20代に書かれた掌・短篇を10篇収録。三島文学の系列からすれば、『仮面の告白』や『金閣寺』といった本格的な小説と、ライトな三島との中間くらいの位置づけ。女を描かせれば実に上手い三島だが、ここでも朝子を近距離から眺めながらも、冷静沈着に分析して見せる。エンディングは多義的な解釈が可能だが、私はやはりエレクトラ・コンプレックスを採る。他の小品では「侍童」、「鴛鴦」あたりは小説の巧みさが光るし、「雛の宿」の幻想文学的な洒脱さも捨てがたい。三島はやはり若くして三島だ。
2015/03/15
遥かなる想い
三島由紀夫ほど、肉体・美貌というものに拘った小説家はいないかもしれない。美しく仕立て上げた妻が顔に醜い火傷を負って…何を書こうとしたのだろう。
2010/06/12
takaichiro
由紀夫先生をもう一冊。表題の中編、他10の短編を収録。「女神」は女性美を追い求める男の飽くなき執念を軸に、周辺に様々な人間の感情を時に鮮やかに、一方で暗闇に蠢く得体の知れない気持ち悪さまで編み込む。煌びやかな文体は少し抑えめ。その変わりキメ細かな心情描写と微かだが予想外の展開を重層的に表現。遠くまで続く波間の重なりを海岸で見つめている時の様な畏怖を感じる。美貌の妻が空襲で顔に火傷を負い、娘の朝子を美の化身に育て上げようとする周伍。若い朝子の恋愛感情や、母親の娘に対する嫉妬も絡み思い通りには行かず・・・
2020/02/02
優希
主観的・閉鎖的な美の世界に息を呑みました。10編全てに歪でありながらも完璧な美しさが見られます。三島の追求する美意識が至る所に散りばめられていると言ってもいいでしょう。中・短編とはいえども、流麗な言葉で語られる世界観には、酔わせる力を感じました。話が短い分、凝縮された世界観が伺えるように思います。
2017/08/25
馨
表題作目当てで買いました。他の短編集も素晴らしく贅沢な1冊でした☆戦後文学のイメージにない内容の話が多く昭和20年代に書かれたとのことで驚きました。『女神』『接吻』『雛の宿』『哲学』が良かったです!『朝の純愛』もサスペンスチックで面白いです。『女神』は、自分が朝子、周伍、依子のどの立場からでもどこか共感でき、美しい姿だけを求める姿=いつの間にか人間の醜さが現れるものなのだなと感じました。それにしても三島先生の作品の日本語の美しさはここでも健在で読んでいて日本語に誇りが持てました。。。
2013/10/05
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