ラディゲの死 (新潮文庫)
ラディゲの死 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
三島の17歳から31歳に書かれた13の短篇を収録。ただ、『花ざかりの森』などの自選短篇集には入らなかったものから選んでいるために、残念ながら質は幾分か落ちるのは否めない。篇中では、やはり表題作にとられた「ラディゲの死」が光彩を放つ。コクトーが言う。「初めから、僕には、ラディゲは借りものであって、やがて返さなければならないことがわかっていた」と。十代の頃から才能を発揮した三島は、夭折に憧れていただろう。弱冠20歳で『肉体の悪魔』と『ドルジェル伯の舞踏会』を残し夭折したラディゲこそは、三島の永遠の憧憬だった。
2012/11/14
優希
17歳から31歳までの軌跡がわかる短編集でした。繊細で緻密で絢爛な世界はまさに天才が故の雅さを放っています。時代も国も様々に描いた中に見られる皮肉と自意識は一貫したもののように感じました。瞬時に言葉を美的なものへと変化させ、肉体的フェティシズムを表現する自己顕示は、その感覚と感動を味わい、受け入れる人がいるかどうかは切実だと言えるでしょう。夭折の天才・ラディゲへの憧憬がある意味苦しい。ボディビルへの陶酔が内なるラディゲとの別れだったのでしょうか。心酔から自己愛への傾倒が眩しいです。
2016/10/22
榊原 香織
短編集 表題作は詩として読むべきか。 古典のような”みのもの月”17歳で書いたというのは驚き。 他のは、う~ん、技巧的すぎるなぁ。 特に自死が。三島だと思うと余計にそう思う。 ”日曜日”は意外に世界系?と思ってたら、あらら・・
2022/01/06
i-miya
2013.06.27(再読)三島由紀夫著。 (カバー) 神の兵隊によって、3日間のうちにぼくは銃殺されるんだ、という自らの予言。 その通りにラディゲはコクトオに見守られながら二十年の生涯を閉じた。 コクトオはラディゲの庇護者。 三島が少年のときから心酔しつづけてきたラディゲ。 夭折の天才。 その晩年と、○じゅうを描く。 他13短編。 (解説=野島秀勝) S17-31、まで、ということは、T14生まれの三島、そのまま昭和の年数が満年齢で計算される。
2013/06/27
優希
再読です。繊細で機密で絢爛な世界は天才が故の強さのように感じました。現実を明晰且つ辛辣な筆致で描く世界は皮肉と自意識に通じるものがあります。瞬間的に言葉を美的なものに昇華させ、肉体的フェミニズムを表現する自己顕示欲には切実なものがあるように思います。現実を厳しく裁断した短編集は受け入れられる人とそうでない人に別れてしまう気がしました。ボディビルへの道を歩む分岐点にもなった短編集と言っても過言ではないと思いました。
2024/04/26
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